新聞広告で発売を知って、次の日には読み始めた小澤征爾・村上春樹著『小澤征爾さんと、音楽について話をする』は、久しぶりに、読み終わるのがもったいないという気分に包まれながらの読書となった本だった。 その本の6つのパートにわかれたうちの第2章にあたる部分が『第二回 カーネギー・ホールのブラームス』で、昨年、小澤さんとサイトウ・キネン・オーケストラがカーネギー・ホールでブラームスの交響曲第1番を演奏した録音を聴きながらの二人のおしゃべりが収録されている。その冒頭で村上さんは次のように語っている。 もう二十五年も前になりますが、あれも見事な演奏でしたね。音がどこまでも美しくて、音楽が目の前に鮮やかに立ち上がってきた。響きが今でもまだ耳に残っているくらい。でも正直言って、今回の方が更にすごいという気がしました。特別な何かがあるというか、ほかではまず見受けられない一期一会ともいうべき緊迫感がみなぎって