連載コラム「銀幕を舞うコトバたち(23)」 夫婦はこのお茶漬の味なんだ。 2018/6/22 カテゴリ:コラム "銀幕を舞うコトバたち" 家族や夫婦を描くことが多かった小津安二郎の映画に食べ物は欠かせない。食べものがそのままタイトルになった作品もいくつかある。プリントが失われてしまった『カボチャ』は毎日カボチャばかり食べさせられてウンザリしているサラリーマンが主人公で、カボチャを抱えて電車に乗って捨てに行く喜劇だったようだし、遺作は『秋刀魚の味』。その次回作として小津が構想していたのは『大根と人参』だった。 しかし、タイトルが食べ物で、しかもその食べ物が映画の主題を言い表している作品となると、『お茶漬の味』を置いてほかにない。 もともと、お茶漬は小津の大好物。燻製の鮭を火鉢で焼いてご飯に乗せ、手早く熱いお茶をジューッとかけて食べるのが好きだった。従軍中の日記にも食べたいものとして「鯛茶」や