今でも背筋が寒くなる話がある。モスクワ支局長だった1997年4月、サンクトペテルブルクのホテルでルームサービスを頼みボルシチを食べると、睡魔が襲い洋服を着て靴を履いたまま寝込んでしまった。 翌朝目覚めると、パスポートと財布は残っていたが、ドル札だけが抜き取られていた。当時、外務省国際情報局分析第一課勤務でモスクワを訪問していた佐藤優氏に相談すると、しばらくして回答があった。「ボルシチに睡眠薬を混入して物取りを装って警告したようです」 ロシア対外情報庁(SVR)と接触のあった佐藤氏がロシアの意図を分析してくれた。 彼らが警告を発した理由は「会ってはいけない人間に会っている」「とってはいけない情報を入手した」「立ち入り禁止の場所に入った」に抵触したからで、警告を無視していれば、殺されるか、殺されずとも殴られるなどの暴力を受けるか、国外追放になっていたかもしれないという。 当時、先輩の業務を引き