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ブックマーク / dain.cocolog-nifty.com (15)

  • 認知科学から見た、多くの人が論理的に考えない理由『類似と思考』

    2つ問題がある。どちらの問題が、簡単だろうか? 問題は解いても解かなくてもいい。問われているのは、「どちらが簡単か」である。 問題1 ここに四枚のカードがある。 片面にはアルファベットが印刷されており、もう片面には数字が印刷されている。このカードは、「表が母音なら、裏は偶数」というルールに従って作られている。 いま、この四枚のカードが並べられている。これらが、前述のルールに従っているか調べるために、どのカードを裏返してみる必要があるか。 1枚目のカード  U 2枚目のカード  K 3枚目のカード  3 4枚目のカード  8 問題2 あなたは警察官だとする。 あなたは、無免許ドライバーを見つけようとしている。ある駐車場に行くと、車の近くに次の4人がいた。あなたは、どの人を調べるべきか。 1人目  車を運転しようとしている人 2人目  赤ちゃん 3人目  免許を持っている人 4人目  免許を持

    認知科学から見た、多くの人が論理的に考えない理由『類似と思考』
  • 皮肉が分かる人・分からない人『アイロニーはなぜ伝わるのか?』

    せっかくの休日。ゆっくりしたいのに、「ほら、お出かけ日和だよ!」と友人にピクニックに連れ出される。みるみるうちに曇ってきて、どしゃ降りになる。びしょ濡れでになりながら友人に、「ほんと、お出かけ日和だね!」と叫ぶ。 晴天を期待してピクニックに行ったのに、どしゃ降りの大雨という現実に見舞われる。この期待と現実の違いを際立たせるために、「お出かけ日和」なんて逆を言う。これがアイロニーだ。 アイロニーとは何か この「期待」と「現実」を巧みに対比させ、あてこする構造から、アイロニーを解き明かしたのが『アイロニーはなぜ伝わるのか?』だ。 紹介される豊富な例を聞いていると、語られている言葉とは違う意味(意図)が飛び交っていることが分かる。「お出かけ日和」は分かりやすいが、小説やシナリオでは、かなり高度な「意図のやりとり」をしている。 これ、流行の機械学習では解析できないだろう。自然言語を形式的に解析して

    皮肉が分かる人・分からない人『アイロニーはなぜ伝わるのか?』
    bell_chime_ring238
    bell_chime_ring238 2020/03/02
    皮肉や反語を自主的に使う頻度を下げてるけど、伝わりにくいのはこういうことだよね。言語が載ってる土台が共有できてないから日本語のはずなのに伝わらないんだ。レトリックの移り変わりだな
  • フェイク歴史を言ったもの勝ちになるいま、『なぜ歴史を学ぶのか』

    フェイクニュースがまかり通り、「真実」が希釈化されるいま、歴史学は何ができるのか? この疑問に答える手がかりは、アメリカ歴史学者リン・ハントが著した書にある。 著者はまず、歴史政治化という問題について、具体的に説き起こす。 ホロコーストを否認するメリット たとえば、ホロコーストの否認だ。ナチス・ドイツが組織的に行った大量虐殺を「なかった」ことにする。それも、SNSや思想団体というレベルではなく、政府高官レベルでホロコーストを否認するところもあるという。 2005年12月、イランのアフマディネジャド大統領は、ホロコーストを「創り出された神話」だと発言した(※1)。ただし、核計画に対する国連の制裁を懸念し、イラン公式の報道機関は、この発言が最初からなかったかのように録画から取り除いている。 一つの歴史的事実について、なぜこのように発言するか。 それは、反イスラエル政策の一環として有効だと

    フェイク歴史を言ったもの勝ちになるいま、『なぜ歴史を学ぶのか』
  • 「古典は本当に必要なのか」討論会へ行ってきた

    古典不要派と必要派がガチで議論するシンポジウム「古典は当に必要なのか」を見てきた。パネリストの紹介は[「古典は当に必要なのか」シンポジウム]で、youtube や twitterまとめ([第一部]、[第二部])で見ることができる。 3行でまとめる+問題の質 長いので3行でまとめる。「高校の古典(古文・漢文)は必要か?」という議題に対し、 不要派:古典は選択科目にして論理国語に注力すべき。あと現代語訳でおk 必要派:幸せに生きるための古典は原文も一緒でないと 会場の声:必要派が優勢だが、現場では現代語で教えてるのが実情 そして、この問題の質は次の通り。「古典は必要か?」と問われれば、必要に決まっている。問題なのは、どれくらい必要なのか? と問われていることに気づいていないことである。 そして、もっと厄介なのは、「これくらい必要」の「これくらい」は何を根拠にそう言えるのかを、示せていな

    「古典は本当に必要なのか」討論会へ行ってきた
    bell_chime_ring238
    bell_chime_ring238 2019/01/20
    “「これくらい必要」は何を根拠にそう言えるのかを、示せていないこと。” “相手が使う言葉を掘り下げてみると、実は互いにつながりあっていたことが分かる場合もある” 議論のエッセンスが詰まっている良記事。
  • 『虚数の情緒』はスゴ本

    一言なら鈍器。二言なら前代未聞の独学書。中学の数学レベルから、電卓を片手に、虚数を軸として世界をどこまで知ることができるかを追求した一冊。 「スゴ」とは凄いのこと。知識や見解のみならず、思考や人生をアップデートするような凄いを指す。ページは1000を超え、重さは1kgを超え、中味は数学物理学文学哲学野球と多岐に渡る。中高生のとき出合っていたら、間違いなく人生を変えるスゴになっていただろう。 ざっと見渡しても、自然数、整数、小数、有理数と無理数、無理数、素数、虚数、複素数、三角関数、指数、関数と方程式、確率、微分と積分、オイラーの公式、力学、振動、電磁気学、サイクロイド、フーリエ級数、フーコーの振り子、波動方程式、マックスウェルの方程式、シュレーディンガー方程式、相対性理論、量子力学、場の量子論を展開し、文学、音楽、天文学、哲学、野球に応用する、膨大な知識と情熱が、みっちり詰め込まれ

    『虚数の情緒』はスゴ本
  • 東大・京大で『勉強の哲学』が一番売れている理由「勉強するとキモくなる」

    「勉強とは何か?」を根源的に考えた一冊。一言なら「勉強とは変身である」になる。 巷に数多のノウハウではない。意識高い系の自尊心をくすぐるではない。勉強するとはどういうことか、勉強することで何が起きるのかを、言語と欲望の問題にまで踏み込み、掘り下げる。 議論のバックグラウンドに、フーコーの権力システム、ドゥルーズ&ガタリの脱コード化、さらにウィトゲンシュタインの言語観をも引き込んでいるが、咀嚼しきった上で原理的に考え抜く、その知的格闘が面白い。 勉強すると何が起きるのかを考える際、勉強する「前」はどうなっているかに着目する。自分が話す(=考える)言葉やコードは、そのときに自分がいる環境に依存しているという。半径5mの仲間や学校、家族、手元の端末のSNS、マスコミ、社会などから、「こうするもんだ」というコードにノッて話し、考え、行動する保守的な状態だという。 それが、勉強することにより、慣

    東大・京大で『勉強の哲学』が一番売れている理由「勉強するとキモくなる」
  • 『土と内臓』はスゴ本

    人体をトポロジー的に見ると、消化器官を中心とした「管」となる。もちろん胃や腸には逆流防止のための弁が備えられているが、位相幾何学的には「外」の環境だ。 この見方を推し進め、内臓をぐるりと裏返しにしてみる。くつ下を裏返すように、内側を外側にするのだ(このグロい思考実験は、クライヴ・バーカーのホラー小説でやったことがある)。裏返しにされた小腸や大腸を見ると、そこに植物の根と極めてよく似た構造と営みを見出すことができる。「水分や栄養素を吸収する」相似だけでなく、そこに棲む微生物との共生関係により、健康や成長面で重要な物質がやり取りされている。根と腸は、微生物とのコミュニケーションや分子取引をする市場なのだ。 書の結論は、微生物を中心とした人体の腸と植物の根の相似型であり、これに頭をガツンとやられた。ばらばらに得てきた知識が書で一つにまとまるとともに、わたし自身が囚われていた先入観がぐるりと―

    『土と内臓』はスゴ本
  • 動いているコードに触るな『失われてゆく、我々の内なる細菌』

    プログラマの格言に、「動いているコードに触るな」がある。ビジネス環境の変化に合わせ、巨大なシステムを維持・改善していく上で、ほぼ原則といってもいい。 その意味はこうだ。長いこと複雑怪奇な状態なのに、なぜか正しく動いているプログラムに対し、不用意に手を入れると、思いもよらない不具合が出る(これをデグレードという)。一見冗長で、まわりくどく無駄なことやっているようなので、よかれと思って直す。すると、触った部分とは関係なさそうな別の場所・タイミングで、予想外の動作をする。結果、因果が特定できないまま解析が長引くことになる。きちんとリソースを充てて改善するならともかく、「なぜ上手く動いているか」が分からないまま改修するのは、非常にリスキーなのだ。 人体に常在し、ヒトと共進化してきた100兆もの細菌群を「マイクロバイオーム」と呼ぶ。このマイクロバイオームの多様性を描いた書を読むと、抗生物質の濫用に

    動いているコードに触るな『失われてゆく、我々の内なる細菌』
  • 『世界システム論講義』はスゴ本

    「なぜ世界がこうなっているのか?」への、説得力ある議論が展開される。薄いのに濃いスゴ。 世界史やっててゾクゾクするのは、うすうす感じていたアイディアが、明確な議論として成立しており、さらにそこから歴史を再物語る観点を引き出したとき。「こんなことを考えるの私ぐらいだろう」と思って黙ってた仮説が、実は支配的な歴史観をひっくり返す鍵であることを知った瞬間、知的興奮はMAXになる。 たとえば、「先進国(developed)」と「途上国(developing)」という語に、ずっと違和感があった。「後進国」は差別的だからやめましょうという圧力よりも、この用語そのものが孕む欺瞞を感じていた。 なぜなら、この語の背景として、近代化・工業化が進むというプロセスがあるから。なんなら、進化のメタファーを使ってもいい。産業構造が一次から高次に転換するとか、封建社会から資主義社会に"進化"するといった欧米の経済

    『世界システム論講義』はスゴ本
  • 『病気はなぜ、あるのか』→適応戦略と進化のミスマッチ

    風邪をこじらせたとき、とにかく体温を下げるのはダメで、頭を冷やして安静にしておく。これは知ってた。だが、処方された抗生物質は、症状が治まったとしても「すべて飲み切る」。これがいかに重要かは知らなかった。 なぜなら、半端な服用は、抗生物質に耐性がある細菌の生き残りに手を貸していることになるから。このとき身体は、細菌のサバイバル戦略の最前線になっているのだ。発熱への対処も同様で、細菌にとって不適切な環境を生み出しているのに、解熱剤で下げてしまっては元も子もない。これらは進化医学からの知見で、身体の防御機能と細菌の適応戦略になる。 「病気は、どのように(How)して起きるのか」については臨床医学の世界になる。もちろん病気の原因もそこで追究はされるものの、その病気を引き起こしている至近要因までになる。そもそも、「その病気がなぜ(Why)あるのか」という究極要因まで踏み込むのが、進化医学になる。発熱

    『病気はなぜ、あるのか』→適応戦略と進化のミスマッチ
  • 貧乏人は早く死ねというのか『老後破産』

    まだ暑い盛り「お年寄り、クーラーつけず熱中症、救急搬送8000円」というニュースを目にした。 省エネなのか冷や水か、場合によっては生命維持装置でもあるスイッチを切るなんて。こまめにON・OFFしても、浮く電気代はわずかなものらしい。電気代ケチって病院代かかるなんてギャグかと思っていたら、事情は違うようだ。その差ですら惜しむような、さらには電気代すら払えない高齢者の現実を、書で知った。 書では、年金だけでギリギリの生活をしている状況を、「老後破産」と位置づけ、必要な医療も受けられず、十分な事もとれない高齢者たちの実態を報告する。元はNHKスペシャル『老人漂流社会 "老後破産"の現実』(2014.9.28放送)をベースに、番組では紹介しきれなかった事例も併せて書き直している。番組は見逃していたが、報われない老後の現実が痛々しく、他人事とは思えない。 たとえば、港区の築50年のアパートに住

    貧乏人は早く死ねというのか『老後破産』
    bell_chime_ring238
    bell_chime_ring238 2015/10/16
    料理スキルのなさは家事スキルのなさに比例し、家事スキルのなさは生活力のなさに直結する。結果、お金がないと何もできなくなる。都市部で困窮してる人にこういうパターン多いかもしれない。
  • 社会科学と歴史学を統合する『歴史から理論を創造する方法』

    社会科学と歴史学をつなぐ、ユニークな試み。 野心的なタイトルとは裏腹に、堅実な理論構築を目指した好著。政治学や経済学、社会学の推論と検証の方法をおさらいすると同時に、歴史分析の手法を学べる。これらの学術分野において、論文のテーマ出しをシステマティックに行い、生産性を向上させたい方には、有益なヒントが得られるだろう。 そして、同じ「社会現象を説明する」学術でも、社会科学と歴史学の間には、深い溝があることを知る。それぞれの分野の書籍から感じていた「差」が、如実に見えてくる。すなわち、一次資料を渉猟して、歴史的新事実を提供する歴史研究者と、それを利用して理論構築を行う社会学者の構図である。さらに、自説に都合良く歴史的事実を取捨選択したがる社会科学者と、蛸壺化された研究対象しか見ようとしない歴史家の双方が、批判されている。 これを解消し、両者の歩み寄りを促すための方法論が、書だ。恣意的に事例を選

    社会科学と歴史学を統合する『歴史から理論を創造する方法』
    bell_chime_ring238
    bell_chime_ring238 2015/09/06
    社会科学の方法論が本当にその通りかは判断しないけど、歴史学をかじった人間としては“自説に都合良く歴史的事実を取捨選択したがる”人たちが横行する理由は疑問に思ってる。パターン認識が正しいという指摘に同意
  • 『ぼくらが原子の集まりなら、なぜ痛みや悲しみを感じるのだろう』はスゴ本

    意識は科学で説明可能か? このとんでもなくハードな問題に突入する。ギリギリ捻られる読書体験を請け合う。 著者は現役の哲学者、意識という現象を自然科学的な枠組みのもとで理解するという問題(意識のハード・プロブレム)に、真っ向から取り組んでいる。「物理主義」や「クオリア」、「哲学的ゾンビ」「意識の表象理論」を駆使して、科学・哲学の両方に跨がる難問に挑戦する。[wikipedia:意識のハード・プロブレム]に興味がある方は、ぜひ手にして欲しい。深く遠いところまで連れて行かれるぞ。 ハードがあるなら、イージーもある。流行りの認知科学にありがちな、MRIやCT、電気パルスを用いて、脳状態と意識経験の相関を明らかにする研究だ。例えば赤い色を見たとき、脳のどの部位がどのような状態になっているかを解明する問題で、これが意識のイージー・プロブレムになる。怪しげな脳科学者が、「脳はここまで解明された!」と宣っ

    『ぼくらが原子の集まりなら、なぜ痛みや悲しみを感じるのだろう』はスゴ本
  • 怒りの根っこには必ず、「私が正しい」という思いがある『怒らない練習』

    怒らない人生が欲しい人に。 マスゴミ、経済学者、暴走老人と、世に怒りの種は尽きまじ。新聞読まないのは心の平穏のためだし、オフィスではひたすら平常心、の罵倒は御褒美です。それでも「イラッ」とくる瞬間が怖い。いったん怒りのスイッチが入ったら、どんどんエスカレートして逆上するから。そして、ずっと後になっても何度となく思い出してはネチネチ自分を責めるハメになるから。 なんとかせねばと読んだのが『怒らないこと』、これは素晴らしいだった。なぜなら人生変わったから。「一冊で人生が変わる」ような軽い人生なのかと言われそうだが、違う。「怒り」の悩みは常々抱えており、ガン無視したり抑圧したり、王様の耳はロバの耳を繰り返してきた。上手くいったりいかなかったり、アンガー・マネジメントはかくも難しい。だが、そういう苦悩を重ねてきた結果、この一冊をトリガーとして一変させるだけの下準備になっていたのだろう。とにかく

    怒りの根っこには必ず、「私が正しい」という思いがある『怒らない練習』
    bell_chime_ring238
    bell_chime_ring238 2015/04/21
    一次感情が不安や落胆で二次感情が怒りだとすると、だいたい一次でストップする。原因分析に入り理由を見つけて納得するので、あまり腹が立たない。グダグダ言われても整理がついてるから、勘違いめとスルーできるな
  • 結果から原因を探る数学『逆問題の考え方』

    わたしが知ってる数学は、“半分”でしかなかった。もう半分は、生々しく、荒々しい。同時に、数学の「正しさ」について強制的に考えさせられる。 わたしの知ってる数学は、「原因→結果」に従う。すなわち、原因を既知として法則に沿って計算する。万有引力から塩水の濃度まで、自然界を則るルールの理解や予測に役立つ。書によると、これは「順問題」と呼ぶ。 一方で、「結果→原因」を求める数学がある。現象の原因を観測結果から、逆のパスを通して決定・推定する問題だ。これが「逆問題」だ。逆問題を意識しないとき、「順問題」は、単に「問題」と呼ばれる。わたしが数学の全てだと信じてきた問題の大半は、これだったのだ。 たとえば、放射性物質で汚染された水を入れる貯水槽の問題がある。 【順問題】 ある貯水槽に放射性物質で汚染された水が流れ込み、混ぜ合わされ、流れ出ている。ある日、貯水槽の放射性物質濃度は、1Lあたり24.0ベ

    結果から原因を探る数学『逆問題の考え方』
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