私が12歳の時の話だ。 当時、中学受験をめざして進学塾に通っていた。中学受験といっても30年近く前の地方のこと、今ほど厳しい状況でもなく、塾内で殺気だつこともなく、みな和気あいあいと暮らしていた。比較的勉強のできる子たちといっても、小学6年生。女子はもう6年ともなるとかなり大人びていて、些細な諍いをすることなどまずなかったが、男子は小学生らしくふざけあうことも多かった。そんな中、私は塾の中でトップの成績だったので、男子からも一目置かれているようなところがあった。 ある日の授業の終わりごろ、何かの話があったようで、いつも帰りに迎えにくる父が、塾内に入ってきた。父は教室の隣の応接室で先生となにか話していた。 それが私の父であることは、互いに合図を送ったので、隣の教室にいた児童たちにもすぐにわかった。「あれ、azumyのお父さんか」という感じで部屋がざわついた。次いで、男子の一部が、「azumy