ウイルスといえば、インフルエンザや口蹄疫ウイルスのように人や動物に関連する病原体というイメージが強い。しかし、細菌に善玉があるように、実はウイルスにも、哺乳動物・昆虫・植物などの生存を助けるものや、地球環境を維持する海洋ウイルスなど、いい奴がたくさんいるのである。そんなあまり人に知られていないウイルスの役割について、アカデミックかつトリビア的に紹介するのが本書である。 2000年、今まで病原体の塊と思われていたウイルスが、実は人の胎児を守っていることが明らかにされ、人びとに衝撃を与えた。母親の免疫系にとっては父親の遺伝形質は異質な存在であり、普通であれば免疫反応によって胎児内の父親遺伝形質を拒絶しようとするはずである。ところが、拒絶反応の担い手である母親のリンパ球は、一枚の細胞膜によって胎児の血管に入るのを阻止されている。一方でその細胞膜は、胎児の発育に必要な栄養分や酸素の通過は遮らないの
![『ウイルスと地球生命』知られざるウイルスの役割 - HONZ](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/6cf5f186b9acd3ca172a7a4fe5c710d3373068e4/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fimages-fe.ssl-images-amazon.com%2Fimages%2FI%2F41EzkWzFk%252BL.jpg)