新宿駅東口交番前に立っている一番可愛い子がわたしだよ、と彼女は言った。 晴れの日だった。朝の洗濯物はすぐ乾き、夜はよく冷え込んだ。そんな火曜日の20:00ぴったりに待ち合わせして、僕が直観だけを頼りに彼女を見つける手筈だった。わたしを見つけてみせてよ、と彼女は言った。普通の待ち合わせはつまらないから、最高のロマンスを演出しよう。普通というものに抵抗しよう。恋愛は社会に許容された唯一の狂気なのだから。これが僕らの謀略だった。 僕は19:55に東口喫煙所でクール8ミリを一服しつつ、いつものバーに電話する。もしもし、これから2名、15分後に、はい、カウンターでお願いします、はい、何某と申します、よろしくお願いします、失礼します。 僕は彼女の服装もいまの髪型も知らない。顔は写真で見たことがあるが不安だった。19:57、彼女は間も無く東口交番前に着く旨の連絡を寄こし、僕は改めて彼女の写真をiPhon