カリフォルニア大バークリー校で教壇に立つ安俊弘。「フェアネス(公正)」が実感できる米国を「ついのすみか」と決めている(撮影・鍋島明子) 人類と原子力は共存可能なのか―。東京電力福島第1原発事故は世界にこの巨大な問いを投げ掛けた。米西海岸には、原発の「出口戦略」を模索する「原子力ムラ」の住人がいる。カリフォルニア大バークリー校原子力工学科教授の安俊弘(アン・ジュンホン) (53)は韓国人として日本に生まれて大学を卒業、日本で教壇に立ち、17年前にバークリーへ移った。二つの母国への愛情と敬慕の念、そしてプロの誇りを胸に異色の在日韓国人3世の学者はその「解」を求め続けている。 今年3月15日。東京・本郷の東大キャンパスで、原子力界の重鎮が集まるシンポジウムが開かれ、その壇上に安の姿があった。スクリーンには「原子力発電の『出口戦略』構築のすすめ」と記された安作成のパワーポイントが映し出された。