熱田神宮(名古屋市熱田区)が所蔵する「日本書紀」の写本全体を撮影した複製本が、八木書店(東京)から初めて刊行され、名古屋発で日本語の変化の過程が解明されることへの期待が高まっている。「熱田本」には、他の写本にはない単語や熟語の読み仮名が多数あるが、国の重要文化財のため、原本を自由に見られる機会はこれまで少なかったためだ。熱田神宮では「これを機に多くの研究者に熱田本を活用してほしい」と話している。(中村亜貴) 日本書紀は漢文で書かれており、文字の脇に読み仮名が振られている。熱田神宮所蔵の「熱田本」は、京都・金蓮寺から奉納された南北朝時代の写本で、残っているのは30巻中の1~15巻(11巻除く)。このうち3~9巻については、作成時期が判明している現存写本の中では最古のものとなっている。 熱田本の読み仮名には他の写本にない特有のものがある。例えば、「翠嶺万重」の「万重」に「ヨロツヘ」と読み仮名が