1980年代、インドでは、しばしばニワトリが大量死していた。鳥インフルエンザ・ウィルスではなく、SMAM1と呼ばれるアデノ・ウィルスの流行によるものだった。 当時、ボンベイで家庭医をしていたニキル・デュランダール氏は、友人から奇妙な話を聞かされた。動物が病原体に感染して死ぬ場合、普通は“やせ衰えて”死ぬはずである。ところが、SMAM1に感染して死んだニワトリは、異様に太っていた。肝臓と腎臓が肥大していた。コレステロール・レベルは低下しており、胸腺は萎縮していた。 デュランダール氏は、こう考えた。SMAM1は、ニワトリを死に至らしめるウィルスであると同時に、ニワトリを異常に肥満させるウィルスに違いない。しかも、人間にも何らかの影響を与えている可能性がある。 肥満体の患者の20パーセントにSMAM1への感染歴があることが判明したのである。これらの患者は、著しく過体重で、コレステロール・レベルが