東日本大震災から1年が経った。マグニチュード9の激震は、「1000年に1度」とも言われる巨大な津波を引き起こし、東北地方の太平洋側を中心に広域にわたって甚大な被害をもたらした。津波による死者と行方不明者は約2万人に上る。 今後も地震だけでも首都圏直下型地震や東海・東南海・南海の3連動地震といった大規模地震の発生が予想されているほか、洪水や台風、火山の噴火などの自然災害や感染症のパンデミック(世界的大流行)、テロと、社会経済に深刻な影響を及ぼすリスクが日本には山積している。にもかかわらず、震災から時間が経過するとともに、危機意識が薄らぐ傾向が見え始めている。 今回の連載では、東日本大震災がこの国に突きつけた課題を受けて、防災やリスクマネジメントの専門家に、日本で起こり得る災害のリスク、そして社会や企業、個人の備えはどうあるべきかを聞く。 今回は、海洋研究開発機構の地震津波・防災研究プロジェク
スマトラ地震の震源とタイのプーケット島やピピ島のあるアンダマン海沿岸の間の距離は600キロ。地震があってから津波が到達するまでの時間は75分だった。 その75分間を歯ぎしりしながら見守るしかなかった一人の男がいる。タイ人の地震専門家サミス・ダマサロジュさんは地震の発生を知り、必ず津波がタイ南部の海岸を襲うに違いないと確信した。 彼はまず、気象庁長官に電話をかけたが、ずーっと通話中だった(実はそのとき気象庁長官は会議中だった)。気象庁にも電話してみたが、日曜なので誰もいなかった。 「地震は予知できないとしても、津波は予知できます」と彼は言う。タイの政府関係者や観光関係者がそんな基本的知識さえ知らないわけがない。 そして地震発生から75分後に、津波がアンダマン海沿岸に到達したのだ。ダマサロジュさんは、どれほど無念に思ったことだろう。筆者は、これほど歯がゆいシチュエーションをほかに想像できない。
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