最近、初めて食べてとりこになった広東料理がある。 ミカンの一種、ザボンの皮にカキ油の風味を付けた「蝦子●柚皮」だ。(●は火ヘンに「文」) 調理には手間がかかる。皮を水に漬けては手で絞る作業を繰り返す。そうして渋みを取った皮を、鶏肉や金華ハムから取ったスープに入れて煮込み、カキ油のソースに浸し、エビの卵の蝦子をかけて出来上がりだ。まる一日かかるため、家庭よりも外食向きと言われる。 「ザボンは大きいと皮の筋が多く、舌触りが悪くなる」。香港の広東料理店「桃花源小厨」の2代目・黎宇文さん(39)が勧めるザボンの大きさは大人の拳程度。同店特製を食べてみた。皮のほろ苦さと、カキ油や蝦子の濃厚な風味が鼻腔(びこう)に広がる。うまい。一つ80香港ドル(約1000円)と値段も手頃。グルメの街・香港でもお薦めの一品だ。(吉田健一)