文革５０年の中国：第２部／４ 父を訪ねて 密航挑戦、５度も失敗 あこがれの香港へ | 毎日新聞

１９７６年１月、中国広東省広州の〓潔明（しゃけつめい）さん（６４）は仲間３人と広東省の山中を５日間歩き通し、マカオとの境界フェンスにたどりついた。遠くに、カジノホテルのネオンが輝いていた。 フェンスにしがみついた瞬間、その興奮は冷めた。高さ何メートルもあるフェンスは特別な工具でもなければ、切断したり、よじ登ったりするのは不可能だった。あきらめて海を目指した。用意した手製のゴムボートでこぎ出せば、数時間でマカオに着くはずだった。越境さえできれば、最終目的地の香港に着いたも同然だ。 さらに２日間歩いて海岸に着くと、海は大荒れだった。嵐が過ぎるのを待って一夜を明かすと、警備兵に見つかり、収容所に送られた。先に捕まっていた男が「密航者の水死体を埋葬させられた」と話した。〓さんにとって、５度目の密航失敗だった。