今よみがえる森鴎外：／27 83個の「×」どんな思いで モノグラムの謎＝テレビ演出家・今野勉 | 毎日新聞

＜文化の森 Bunka no mori＞ 鷗外・森林太郎の遺品の一つに「MRモノグラム原板」がある。モノグラムとは氏名の頭文字のことで、MはMori、RはRintaroのモノグラムだ（写真）。私がこの原板を初めて見たのは、昭和五三（一九七八）年、鷗外の生涯を描く三時間ドラマの下調べのため鷗外記念館を訪れた時である。この原板が何なのか、記念館でもよく分かっていなかった。調べてみると、ヨーロッパの家庭で主婦が家族のハンカチや肌着にモノグラムを刺繡（ししゅう）する時に使う型金であることが分かった。 陸軍省軍医・森林太郎は、明治十七（一八八四）年ドイツに留学した。四年後に帰国した際、MRのモノグラムを刺繡したハンカチ入れを持っていた。林太郎の帰国直後にドイツ人女性が来日した。女性は一カ月余の東京滞在のあとドイツへ戻った。一説では、金目当てに来日した下賤（げせん）の女と伝えられていた。しかし、MR原