（２５）アルジェリア カミュの小説「ペスト」の舞台で コロナの不条理にあらがう ウクライナ侵攻に心重ね

海上に花火が鳴っていた。アルジェリア北西部オラン。エスカルゴ（食用カタツムリ）が並ぶ市場でマスク姿の人は数えるほどだ。文豪アルベール・カミュ（１９１３～６０年）の小説「ペスト」の舞台の街は、新型コロナウイルス禍が去ったという安堵（あんど）に包まれていた。 小説はフランス植民地下の４０年代に起きたペスト禍に、フランス人医師や記者らが立ち向かう話だ。都市封鎖されたオランで人々の葛藤や勇気が描かれる。日本では新型コロナの緊急事態宣言の中で再読され、累計で１００万部以上となった。 ただ、カミュは支配者側のフランス人。「アルジェリア人は物語に登場していない」とオランの社会学者モハメド・メブトゥル（７３）は小説を批判する。約１３０年に及ぶ植民地統治で社会は破壊され、オランのコロナ対策は欧米のようにできなかった、と。 ▽救いは宗教 ６２年に独立したアルジェリア。フランス語を駆使するエリート支配層とイスラ