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【文芸時評】3月号 早稲田大学教授・石原千秋 五輪は敗者のためにもある(2/3ページ)
小谷野敦「とちおとめのババロア」(文学界)は、女子大のフランス語教師・福鎌純次がネットお見合いで... 小谷野敦「とちおとめのババロア」(文学界)は、女子大のフランス語教師・福鎌純次がネットお見合いで皇族の後藤雍子(ようこ)(実は雍子女王)と知り合って結婚する荒唐無稽な話で、よくも書いたりと思う。彼女は徳田秋聲の熱烈なファンという設定で、小谷野敦のツイッターを見た人なら誰がモデルだかわかる。文学ネタもちりばめてある。ヒロインが「ようこ」で末尾が「車から降りると、天の川が降るようだった。純次はそっと雍子の肩に手を回した。」とあれば、大枠は川端康成『雪国』である。結婚後に戸籍謄本に「福鎌純次・雍子」とあるのを見て、彼女は「やっと人権が手に入った」とつぶやく。それがこの小説のテーマである。 高原到「「日本近代文学」の敗戦--「夏の花」と『黒い雨』のはざまで」(群像)がいい。敗戦文学と言っていい原民喜「夏の花」のイロニーは自壊し、井伏鱒二『黒い雨』のユーモアは蹉跌(さてつ)したと論じ、いま日本文学は
2018/11/26 リンク