書評同人エッセイ

本を読むことは、どこか歩くことに似ている。思索することが、そもそも歩行的な行為であるということもあるし、本好きな人なら実際に歩きながら本を読むということもあるだろうが、ここではたんに比喩的な意味で僕は言っている。本の中には、都会のアスファルトの路地を散策するように開放的な心持ちで読むのがふさわしい本もあるし、山登りのようにある程度覚悟をきめて体全体を使って登攀しなくてはならないような本もある。もちろん、近所にたばこを買いに出かけるような感じの読書もあるだろう。顔なじみの店番のオバチャンと一言二言会話を交わし、歩き慣れた横町を戻ってくる、そんな本とのつきあい方もたしかにいいものだ。でも、ひとたび自分の住む小さな町を出て、初めて異国の都会を訪れた旅行者や、峻厳な山を踏破した登山家には、言葉にしてみたい思いがどのくらい生まれるだろうか。こういう体験は、誰しも身に覚えがあることだろう。そして、本を

[ayukonbu]

「時間をかけて、たっぷり文字を費やして、その経験を次の人につたえる言葉が、書評というものなのではないだろうか。もし自分が書評を書くとしたら、そのように書きたいし、読むとしたら、そんな書評が読みたい」