そりゃおめぇ、こっちに来た頃は正直おったまげたね。バイト先にいた若ぇのが派手なスケボーの板おっかついで出勤してきたんだ。ろくに挨拶もしねぇで、眠てぇ面ぶら下げたままでよ。「これが東京か」ってぇバカみてぇに思ったもんだ。ニヤニヤしながら「ほな、ゴミほかしてきてくれまっか?」って言いやがったのは今でも忘れらんねぇな。 しかしなんでい、こちとらいつまでも口おっ開いて驚いてるだけの田舎者じゃあねえ。もう何年住んでると思ってやがんだって話で、今やもうすっかり骨の髄まで馴染んでるの馴染んでないのって。可愛がってる後輩が「加納さん今度の休みにスケボーしませんか?」ってぇ誘ってきやがってよ、「てやんでい、そんなあぶねぇ乗り物乗れるかってんだ」って断ったんじゃあ情けねえ、「ほんま」も「やで」も捨ててやった身軽な体をちっせえ板に乗せるなんてこたぁわけねえ、二つ返事であたぼうに「あたぼうよ」と返事したってこった