先のことなど誰にもわからないのだから。 これは、本書『希望名人ゲーテと絶望名人カフカの対話』の冒頭に引用されたゲーテの言葉だ。で、その隣のページには、カフカのこんな言葉が。 ああ、希望はたっぷりあります。 無限に多くの希望があります。 −−ただ、ぼくらのためには、ないんです。 ……のっけから取りつく島もない。が、この2ページだけで本書のコンセプトが見えてこようというもの。 ゲーテとカフカ、ともに偉大な文豪だ。 ゲーテは25歳のときに上梓した恋愛小説『若きウェルテルの悩み』が大ベストセラーになり、82歳で亡くなる間際に「世界文学の最高峰」とも称される長編戯曲『ファウスト』を書き上げた超メジャー作家。 一方のカフカは、「ある朝、目をさますと、虫になっていた(要略)」という書き出しで有名な『変身』や未完の長編『城』の作者だが、作家としての名声を得たのはその40年の生涯を閉じたあとだった。 編訳者