以前ここで来嶋靖生さんの評伝『岩本素白』が河出書房新社より刊行されると書いた*1。それは予定どおり無事刊行され、大方の好評を博したようである。微力ながら同書の編集に関わったものとして欣懐を禁じ得ない。「槻の木」八月号に掲載された小文を以下に再録する。 黄金の釘一つ打つ 以下に記すのは書評ではない。『岩本素白 人と作品』の制作に忝くも関与せさせられた者として、ふつつかな感想を述べるにすぎない。 素白が「槻の木」に初めて書いた文章「早春」、四百字三枚強・全文が本書に引用せられている。以下に「早春」のあらましを記す。 素白は、書き物か読書かに倦んで、縁側でなにともなく老梅を眺めている。ふと、先に近所であった失火と、そのさいに詠んだ句「昼火事をうしろに白し梅の花」を思い出し、堪らなく嫌な気持になる。 「それは此の句が月並を通り越して、嫌みをさへ有つてゐる為ばかりでは無い。もう毛の擦り切れた安価な古
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