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ブックマーク / nikubeta.hatenablog.com (36)

  • 14世紀の危機を語る時にモンゴル史家が語ること 諫早「『14世紀の危機』の語り方」 - オシテオサレテ

    思想 2024年4月号 岩波書店 Amazon 諫早庸一「『14世紀の危機』の語り方:ヨーロッパ到来以前の黒死病」『思想』2024年4月、no. 1200、9–32ページ。 『思想』の特集「危機の世紀」から、14世紀の危機について論じた論考を読む。 非常に多くの情報を提供する論考である。しかし、その骨子は次のように要約できる。「13世紀世界システム」の崩壊は、黒死病によってもたらされたとは考えられない。なぜなら、システムは黒死病が現れたときにはすでに崩壊していたから。システムの崩壊の主要因はむしろモンゴル帝国の解体である。まず気候変動により、帝国の拡大は13世紀末に止まる。その後、帝国を構成する各ウルスの王位継承制度の不全のためウルスは解体し、変動後の気候に適した小政体が数多く成立していった。 ここから私としては、次のような点に論考のポイントがあると判断した。論考の冒頭では14世紀の危機の

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  • 顕名の著者と匿名の査読者 シザール『科学ジャーナルの成立』第3章 - オシテオサレテ

    科学ジャーナルの成立 作者:アレックス・シザール 名古屋大学出版会 Amazon アレックス・シザール『科学ジャーナルの成立』柴田和宏訳、伊藤憲二解説(名古屋大学出版会、2024年)、115–153ページ。 科学ジャーナルの歴史についての研究書の邦訳が刊行されたので、その第3章「著者と査読者」を読む。 科学の発展に貢献したかどうかは、何よりも科学論文の執筆者(オーサー)であるかどうかによって判定される。このような考え方は当たり前に思えるかもしれない。しかし実際には、このような考え方が有力になったのは、ある特定の時期の特定の状況の中でのことであった。19世紀前半のイギリスでは、王立協会を改革しようとする動きがあった。改革を主導しようとした人々は、おおよそ次のように考えた。イギリスの王立協会は、フランスのアカデミーと違い、公的な援助を十分に受けられていない。これは、その有用性が十分に認知されて

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  • それでも地球は動いているのか? Livio, "Did Galileo Truty Say ..." - オシテオサレテ

    ガリレオに帰される「それでもそれ[地球]は動いている」という言葉がある。この言葉をガリレオは当に口にしたのだろうか。この問題については重要な研究上の進展が2020年に報告されている。Mario Livioによる下記の記事である。ここではLivioの報告を簡単に紹介することにする。 blogs.scientificamerican.com 「それでもそれは動いている」という言葉をガリレオが口にしたというのは、後世にできた作り話だろうというというのが、かつての共通見解だった。この話が最初に現れるのは、Giuseppe Baretti.という人物が1757年に出版した『The Italian Library』という書物においてである。ガリレオの死後100年以上経過している。 状況を変えたのは、ガリレオ研究者であるAntonio Favaroが1911年に受け取った手紙であった。手紙の差出人は、

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  • 初期近代における「クリスマス終了のお知らせ」 - オシテオサレテ

    「仮庵の祭からサトゥルナリア祭へ:16世紀の年代学でのクリスマスへの攻撃」Carl Philipp Emanuel Nothaft, "From Sukkot to Saturnalia: The Attack on Christmas in Sixteenth-Century Chronological Scholarship," Journal of the History of Ideas 72 (2011): 503–22. http://muse.jhu.edu/login?uri=/journals/journal_of_the_history_of_ideas/v072/72.4.nothaft.html 1600年代の初頭、とあるプロテスタントの学識者は次のように言いました。 もし私が60年前に我らが主[キリスト]は12月25日に生まれたわけではないと言ったならば、私は焼き

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  • 無限と有限のあいだの断絶 伊藤「ガリレオの数学的原子論」 - オシテオサレテ

    伊藤和行「ガリレオの数学的原子論」『ルネサンスにおける自然観の総合的研究』(平成12年度科学研究費補助金:基盤研究(B)(1)研究成果報告書)、2001年、65–74ページ。 http://www.geocities.jp/kzyk_ito/GMA2001.pdf ガリレオが提唱した特異な原子論が、自然世界への数学の適用という彼の科学方法論と不可分な関係にあると論じた論考である。ガリレオが原子論にもとづく物質理論を体系的に展開したことはない。しかし彼はいくつかの箇所で原子の概念を用いながら、自然現象を説明している。説明されたのは浮力であったり、物体の凝縮や膨張であったりした。たとえば物体が膨張できるのは、あらゆる物体が大きさを持たない無限の数の大きさを持たない原子から成るからである。なぜならこの無限の原子のあいだに無限の数のこれまた大きさを持たない空虚を挿入することで、物体をなす原子が「広

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  • ガリレオ vs. アクシデント Koertge, "Galileo and the Problem of the Accidents" - オシテオサレテ

    Noretta Koertge, "Galileo and the Problem of the Accidents," Journal of the History of Ideas 38 (1978): 389-408. http://www.jstor.org/stable/2708671 ガリレオの科学方法論を扱った古典的論文である。アリストテレス以来のアクシデント(accidents)の着想をガリレオは独自に読みかえていた。彼は主に3種類のアクシデントを区別している。一つは斜面やそこを転がされるボール表面のデコボコのようなものである。あるいは投射体に働く空気抵抗だ。このような不規則性を人間は定量的に扱うことはできない。次に観察者に由来するアクシデントがある。昼よりも夜に月かあかるく輝いているように見えることなどだ。最後に事物を数学的に記述したときと、実際の事物が一致しないことがア

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  • 年代学がつくる文芸共和国 Grafton, "Chronology, Controversy, and Community in the Republic of Letters" - オシテオサレテ

    Worlds Made by Words: Scholarship and Community in the Modern West 作者: Anthony Grafton出版社/メーカー: Harvard University Press発売日: 2011/05/31メディア: ペーパーバックこの商品を含むブログ (2件) を見る Anthony Grafton, "Chronology, Controversy, and Community in the Republic of Letters: The Case of Kepler," in Worlds Made by Words: Scholarship and Community in the Modern West (Cambridge, MA: Harvard University Press, 2009), 115–136

  • 改革を刷り上げること 加藤「ルターの宗教改革」 - オシテオサレテ

    記憶と忘却のドイツ宗教改革:語りなおす歴史 1517-2017 (MINERVA西洋史ライブラリー) 作者: 踊共二出版社/メーカー: ミネルヴァ書房発売日: 2017/10/31メディア: 単行この商品を含むブログ (1件) を見る 加藤喜之「マルティン・ルターの宗教改革 実像と虚像」踊共二編『記憶と忘却のドイツ宗教改革 : 語りなおす歴史1517-2017』ミネルヴァ書房、2017年、15–40ページ。 宗教改革といえば何が思い浮かぶだろうか。いろいろな可能性があるだろうが、その一つにマルティン・ルターがローマ・カトリックの教えに反旗を翻したという事実は間違いなく含まれるはずだ。長きにわたって西洋で維持され、そのため硬直もしていた教義に、ルターが新たな教えをもって立ち上がった。その核心はなんだったのか?たとえば信仰義認とはなにか?こう話を進めると、いきおい議論は精緻に編み上げられた神

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  • 古代への最良の導き手 山下太郎『ラテン語を読む』 - オシテオサレテ

    ラテン語を読む キケロ―「スキーピオーの夢」 作者: 山下太郎出版社/メーカー: ベレ出版発売日: 2017/05/12メディア: 単行この商品を含むブログ (21件) を見る 山下太郎『ラテン語を読む キケロー「スキーピオーの夢」』ベレ出版、2017年。 日語を使ってラテン語を学ぶにあたってふたつおおきな壁があった。ひとつは学習に適した辞書がないということ。もうひとつは初級から中級を橋渡しする教材がないことだった。 書の出現により、後者の壁におおきなヒビがはいったといえるだろう。『ラテン語を読む キケロー「スキーピオーの夢」』、期待にそむかない出来栄えだ。これがあれば、文法学習を終えた直後に独力でラテン語の散文が読める。 いい点は無数にあるけれど、いくつかほんとうにすばらしい点を挙げよう。 まずなによりもすべての単語を拾って解説を加えているのがすばらしい。この手のの多くには説明が

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  • 新しい『リヴァイアサンと空気ポンプ』 - オシテオサレテ

    Leviathan and the Air-Pump: Hobbes, Boyle, and the Experimental Life (Princeton Classics) 作者: Steven Shapin,Simon Schaffer出版社/メーカー: Princeton Univ Pr発売日: 2011/08/15メディア: ペーパーバック クリック: 14回この商品を含むブログ (1件) を見る 1985年に出版された『リヴァイアサンと空気ポンプ』の新版が出されました。著者の二人による新しい序文が加えられる一方で、旧版についていたホッブズの論考の英語訳が削除されています。 新しい序文で試みられているのは、『リヴァイアサンと空気ポンプ』を歴史的に位置づけようというものです。そのために、このが書かれた背景を当時の時代状況や、科学史という領域で共有されていた問題意識、さらには著者

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  • 暗黒の中世からニュートンへ ダランベール「百科全書序論」#1 - オシテオサレテ

    百科全書―序論および代表項目 (岩波文庫) 作者: ディドロ,Didorot,ダランベール,d’Almbert,DALMBERT,桑原武夫出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1995/07/17メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 1回この商品を含むブログ (5件) を見る ダランベール「百科全書序論」ディドロ、ダランベール編『百科全書 序論および代表項目』桑原武夫編訳、岩波文庫、1971年、82–114ページ。 『百科全書』にダランベールが寄せた序文から、学問の歴史について論じた部分を読む。私たちにとってもなじみ深い歴史の見方が鮮明に打ちだされている(カッコのなかは邦訳ページ数)。『百科全書』とは、「学問と技術との合理的[体系的]辞典」(82)である。だがこの題に入るまえに、伝えるべき知識がいかにして生じてきたかについての歴史的解明を行うのが有用だろうとダランベールはいう。そうす

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  • 対象の構成の歴史としての科学史 カンギレム「科学史の対象」 - オシテオサレテ

    科学史・科学哲学研究 (叢書・ウニベルシタス) 作者: ジョルジュカンギレム,Georges Canguilhem,金森修出版社/メーカー: 法政大学出版局発売日: 2012/07/01メディア: 単行 クリック: 2回この商品を含むブログを見る ジョルジュ・カンギレム「科学史の対象」『科学史・科学哲学研究』金森修監訳、法政大学出版局、1991年、3–20ページ。 カンギレムが科学史という学問について語った論文を読む。こみいった議論がなされており、十分な理解がえられたとは到底いえない。ここでは今回読んでみて重要だと思った部分につき、私の側からの解釈を混ぜながら書きとめておきたい。 科学史とは何を対象とする学問なのだろうか。人々はしばしばこの問いへの回答があたかもすでに与えられたかのように、違う問いに取りくんでいる。その問とは、どのように科学史を探究すべきかというものである。あるべき科学史

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  • 「ルネサンス人文主義とキリシタンの世紀」参加報告記 - オシテオサレテ

    https://www.facebook.com/events/693730024086255/ 7月18日、19日の二日間にわたって行われた学術会議「ルネサンス人文主義とキリシタンの世紀」に参加してきました。自分のをのぞくすべての発表についてしっかりノートをとり、大いに学びました。 そうやって聞いていると、各発表のあいだに思いもよらないつながりが見えてくるものです。たとえばコインブラの『天について』注解を扱うルイスの発表、ラムスのガリア主義をとりあげた久保田さんの発表、そしてシェンケルの記憶術に焦点をあてた桑木野さんの発表はみな、いかに効率よく学ぶべきことを吸収するかという16世紀の問題意識を浮きぼりにしていました。この単一の目的のためにコインブラでは体系的な教科書が作成され、フランスではラムスの方法は編みだされ、そしてシェンケルは記憶の技法をオランダで磨きあげたのです。これらの発表につ

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  • 天使は質料と形相からなるのか - オシテオサレテ

    論文を書くための下調べとして、天使の性について中世で戦わされた議論についてメモをとりました。用いたのは次の2つの研究です。 Angels and Angelology in the Middle Ages 作者: David Keck出版社/メーカー: Oxford Univ Pr on Demand発売日: 1998/07/23メディア: ハードカバー クリック: 2回この商品を含むブログ (3件) を見る James Collins, The Thomistic Philosophy of the Angels (Washington, DC: Catholic University of America Press, 1947). [Keck 93-99] 天使を質料と形相の結合体とみなすことができるかという問題は多くのスコラ哲学者を悩ませてきた。この問題が重要視された背景には11

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  • ダイグロシアから二重言語体制へ 大黒『声と文字』第1章 - オシテオサレテ

    声と文字 (ヨーロッパの中世 第6巻) 作者: 大黒俊二出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2010/02/26メディア: 単行 クリック: 30回この商品を含むブログ (12件) を見る 大黒俊二『声と文字』岩波書店、2010年、21–50ページ。 今日はピーター・バークの講演 "Diglossia in Early Modern Europe" を聞きにいきました(まとめはこちら)。というわけで講演で主題的に取り上げられていた「ダイグロシア」と深く関係する文献を紹介しましょう。ローマが築いたバベルの塔がいかに崩壊したかの話です。 ローマの支配は言語の統一をもたらしました。帝国内ではラテン語が標準言語となります(ただし東方ヘレニズム世界でギリシア語が使われ続けたり、ブリタニアでラテン語が浸透しなかったりということはあった)。西ヨーロッパではこの言語的統一が二つの要因から崩壊しました。

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  • 生命を保つにはまともすぎる者 プラトン『ソクラテスの弁明』 - オシテオサレテ

    ソクラテスの弁明 叢書ムーセイオン 作者: プラトン出版社/メーカー: 叢書ムーセイオン刊行会発売日: 2013/03/03メディア: Kindle版 クリック: 1回この商品を含むブログ (3件) を見る プラトン『ソクラテスの弁明』藤田大雪訳、叢書ムーセイオン刊行会、2013年。 Kindle版で『ソクラテスの弁明』の邦訳がでていた。訳者の藤田氏はプラトン哲学の専門家である。2012年に「プラトンのディアレクティケー その成立事情に関する一考察」という博士論文により、京都大学にて学位を取得している。ciniiで検索すると他にもプラトンについての論文を幾篇も公刊されている。アマゾンのカスタマーレビューでの評価も高い。信頼できそうだ。というか150円じゃないか。なにを迷っているんだ私は…。ということで買った。 読みはじめた。気がついたら読み終わっていた。それだけ訳文は日語として読みやすい

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  • 戦国期における応報思想の構築 折井「『ひですの経』の「アニマ論」が意味するもの」 - オシテオサレテ

    キリスト教と日の深層 作者: 加藤信朗,鶴岡賀雄,田畑邦治,桑原直己出版社/メーカー: オリエンス宗教研究所発売日: 2012/03メディア: 単行 クリック: 7回この商品を含むブログを見る 折井善果「キリシタン版『ひですの経』の「アニマ論」が意味するもの」『キリスト教と日の深層』加藤信朗監修、オリエンス宗教研究所、2012年、115–133ページ。 キリシタン文書の文献学的な検討から、当時の時代状況かんする射程の長い議論を導き出す論文を読みました。浄土真宗の教えは基的に他力信仰です。救いというのは人間の選択にではなく、仏の側にもっぱらかかっているとされます。しかし15世紀に蓮如が著した著作には、念仏を唱えることが仏の世界の側への祈願請求となるという理論が現れています。これは来世に現世での行いに応じた応報がありうるという考え方が、戦国の混乱期に求心力をもったことの反映だと解釈でき

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  • 戦国日本からイベリア半島をみる 折井「「アニマ」(霊魂)論の日本到着」 - オシテオサレテ

    知のミクロコスモス: 中世・ルネサンスのインテレクチュアル・ヒストリー 作者: ヒロ・ヒライ,小澤実出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2014/03/07メディア: 単行この商品を含むブログ (20件) を見る 折井善果「「アニマ」(霊魂)論の日到着 キリシタン時代という触媒のなかへ」ヒロ・ヒライ、小澤実編『知のミクロコスモス 中世・ルネサンスのインテレクチュアル・ヒストリー』中央公論新社、2014年、332–361ページ。 戦国の日にキリスト教が伝来していたことはよく知られている。ザビエルが九州にたどり着いて以後、宣教師たちは精力的に布教活動を行った。一時は有力大名の一部が改宗するなどして、国内の信者数は数十万の規模にたっした。しかし1600年代にはいると禁教令が発せられ、キリスト教信仰は禁じられる。残った信徒はカクレキリシタンとして、その信仰を保持する。 このような比較的

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  • 神の姿の捏造と複製 水野「キリストのプロフィール肖像」 - オシテオサレテ

    知のミクロコスモス: 中世・ルネサンスのインテレクチュアル・ヒストリー 作者: ヒロ・ヒライ,小澤実出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2014/03/07メディア: 単行この商品を含むブログ (20件) を見る 水野千依「キリストのプロフィール肖像 構築される「真正性」と「古代性」」ヒロ・ヒライ、小澤実編『知のミクロコスモス 中世・ルネサンスのインテレクチュアル・ヒストリー』中央公論新社、2014年、100–149ページ。 「スキャンダラスな神の概念」のなかで加藤喜之がしめしたように、人間が超越神を理解できるかできないかは、キリスト教神学にとって避けてとおれない問題であった。もし神があますところなく人間に理解されてしまっては、神秘が消失し、信仰も消え去るだろう。だが神がまったく理解不可能であれば、やはり信仰は成りたたないだろう。では神はどの程度まで理解できるのか? 水野千依「キリ

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  • 科学論と科学史の同床異夢 Daston, "Science Studies and the History of Science" - オシテオサレテ

    Lorraine Daston, "Science Studies and the History of Science," Critical Inquiry 35 (2009): 798–813. http://criticalinquiry.uchicago.edu/uploads/pdf/Daston,_Science_Studies.pdf 1970年代から2000年代にかけての科学論と科学史の関係を素描した論考である。科学論と科学史はかつては大変緊密な関係にあった。とくに科学史は科学論から研究領域や研究方法の面で大きな刺激を受けていた。この共同戦線は両分野が共通の敵と対峙していたからなりたっていた。その敵とは科学を経験と論理だけの産物とみなすポジディヴィズムである。 だが二つの分野はやがて違う道を歩みはじめる。分かれ道の出発点は同じだった。クーンの『科学革命の構造』である。だがそ

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