第43回 詩人のように翻訳し、翻訳者のように創作せよ──パートI:翻訳とアイスランド語の未来(吉田恭子) 翻訳という乗り物を前進させる推進者らは同床異夢であり、かならずしも同じゴールを見据えているとは限らない。起点言語側の原作者、編集・出版社をはじめ、目標言語側の翻訳者に編集者、出版社、そして出版を助成するさまざまな組織まで、思惑はそれぞれである。なんといっても、乗り物の原動力が戦争と紛争なのだから。 近年アメリカで外国語学習の要請が飛躍的に高まったのも2001年の同時多発テロとその後のアフガン・イラク侵攻がきっかけだった。以前は外国語を必修としなかったアメリカの大学で軒並みカリキュラム改定が起こった。あるいは、ドナルド・キーンのように、第二次世界大戦中の情報収集を目的とした日本語学習が文学研究・文芸翻訳へ繋がる例を考えてもいいかもしれない。今日英米での文芸翻訳ブームの背後には、英語圏の根