「スティル・ライフ」(池澤夏樹)読了。 「自分の世界」と「外の世界」とは、一定の距離をおいて並立している。 スティル・ライフ (中公文庫) 作者: 池澤夏樹出版社/メーカー: 中央公論社発売日: 1991/12/10メディア: 文庫購入: 14人 クリック: 92回この商品を含むブログ (153件) を見る 本書には2つの短編(中編?)が収録されている。宇宙や微粒子について語る男、佐々木との交流が描かれる「スティル・ライフ」、軍事技術者とその娘、そしてとあるロシア人のストーリー「ヤー・チャイカ」。 「真昼のプリニウス」を読んでから、池澤夏樹の世界観には、なにか自分の求めるものがある、と感じている。池澤夏樹は、世界をどのように捉えているのか?以下は、本書の冒頭にある一節。 この世界がきみのために存在すると思ってはいけない。世界はきみを入れる容器ではない。(中略) 大事なのは、山脈や、人や、染
利己主義という気概ーエゴイズムを積極的に肯定するー 作者: アイン・ランド,藤森かよこ出版社/メーカー: ビジネス社発売日: 2008/12/05メディア: ハードカバー購入: 6人 クリック: 122回この商品を含むブログ (15件) を見る アラン・グリーンスパン前連邦準備制度理事会(FRB)議長がその影響を受けたことでも知られるアイン・ランドは、彼女のいう資本主義、すなわち「完全で、純粋で、支配されない、規則を受けない自由放任資本主義」のための土台として「客観主義」というものを提唱している。 客観主義においては、まず究極的な価値を有機的組織体の生命におく。善や悪という基準も、客観主義では生命を維持する上で有効かどうかによって定まる。生命を維持することが目的である以上、人間は他人の福祉のための目的とはならない。人間は合理的な利己主義者として、自分の福利のために商人のような原則をもつて生
ひさしぶりに、ブログ上での拙著書評。「優しい書評」さんというブログなのですが、さて。 http://blog.livedoor.jp/bookfun_biz/archives/2311651.html >これは、ちょっと時代遅れの方向性を持った視点で書かれている本かもしれない。これは人によって感じ方は違うかもしれない。 いや、まあ、何を時代遅れと感じ、何を時代の先を行っていると感じるかは、人によってさまざまですので、それはいいのですが、 >私は、若者のチャンス(機会)を増やす考えなので、この著者とは正反対の考えなのかもしれない。 といわれてしまうと、あたかも、わたくしは「若者のチャンス(機会)を増やす」のに反対しているかの如くですね。 拙著のどこでそんな馬鹿なことを公言しているのかとパラパラめくってみましたが、残念ながら見つけることはできませんでした。もしかしたら、わたくしについてあること
2009年1月に出された日経の編集委員さんによって書かれた本です。「不動産の大きな流れを伝えることで、日本経済の底流での構造変化とその問題点を浮き彫りにしようと試みた」とあるように、戦後の不動産、土地価格、金融の動きをおさらいするのに、十分な情報を提供してくれました。 地価は、文字通り土地(本書の文脈では、建物の価値も含む)の「値段」ですから、金融の動きと切り離すことはできません。サブプライム・ローン問題がその典型ですが、日本のバブル崩壊を象徴付けた銀行の不良債権問題や、外資ファンドによる再生、REIT(不動産投資信託)の登場など、金融の仕組みなしには語れないのが地価の動きです。 読後感は、良くも悪くも「不動産金融史」でした。著者の表現が、ときおり「・・・は不動産関係者を震え上がらせた」と要らぬ演出を交えているところが興ざめでしたが、過去の経緯を網羅している本だと思います。 「構造変化」に
【プロフィール】常見陽平(つねみようへい) 身長175センチ 体重85キロ 千葉商科大学国際教養学部准教授/いしかわUIターン応援団長/働き方評論家/社会格闘家 北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業、同大学大学院社会学研究科修士課程修了(社会学修士)。リクルート、バンダイ、ベンチャー企業、フリーランス活動を経て2015年4月より千葉商科大学国際教養学部専任講師(現:准教授)。専攻は労働社会学。大学生の就職活動、労使関係、労働問題、キャリア論、若者論を中心に、執筆・講演など幅広く活動中。平成29年参議院国民生活・経済に関する調査会参考人、平成30年参議院経済産業委員会参考人、厚生労働省「多様な選考・採用機会の拡大に向けた検討会」参考人、「今後の若年者雇用に関する研究会」委員、第56回関西財界セミナー問題提起者などを務め、政策に関する提言も行っている。 執筆・講演のご依頼、お問い合わせなどはy
David HOLMGREN, 2009: Future Scenarios: How communities can adapt to peak oil and climate change. White River Junction VT USA: Chelsea Green. デビッド・ホルムグレン著, リック・タナカ訳 (2010): 未来のシナリオ — ピークオイル・温暖化の時代とパーマカルチャー。 農山漁村文化協会, 175 pp. ISBN 978-4-540-10272-1. [わたしはこの版を読んだ] 著者はBill Morrison氏とともに「パーマカルチャー」という社会変革運動を呼びかけている人だそうだが、本書ではパーマカルチャーの中身は[2011-01-19補足]ritaさんご指摘のように第2章の終わり、日本語版49-53ページに説明があるがよくわからない。それを知
失敗学のすすめ 作者: 畑村洋太郎出版社/メーカー: 講談社発売日: 2000/11/20メディア: 単行本購入: 3人 クリック: 56回この商品を含むブログ (59件) を見る■内容【個人的評価:★★★★−】 ○第一章「失敗とは何か」 「失敗学」における基本的姿勢は、私たちの身近で繰り返される失敗を否定的にとらえるのではなく、むしろプラス面に着目してこれを有効利用しようとする点にあります。つまり、失敗の特性を理解し、不必要な失敗を繰り返さないとともに、失敗からその人を成長させる新たな知識を学ぼうというのが失敗学の趣旨なのです。 結論からいえば、最初のうちに、あえて挫折体験をさせ、それによって知識の必要性を体感・実感しながら学んでいる学生ほど、どんな場面にでも応用して使える真の知識が身に付くことを知りました。 ○第二章「失敗の種類と特徴」 失敗の原因を分類すると、次の10項目に大別するこ
本去年に続き、「今年の○冊」シリーズ。まわりの友人たちのブログでは、わりとしっかり目に紹介してくれてるけど、僕は読んだ本全部の読書録をブログでつけてるんで、1個1個は少なめです。さて、まず今年読んだ本は全部で143冊。*1 去年は、その年出たものの中から選んだんですが、今年は7月に『2010年上半期、独断と偏見で選ぶ良書たち。』というエントリを書いて以来、新作を読んでいなかったので、出版年のくくりは外すことに。その代り、以下の3部構成でそれぞれ5冊ずつ選ぶことにしました。「一般書部門」「新書部門」「小説部門」 一般書部門第5位! スティーヴン・D・レヴィット、スティーヴン・J・ダブナー『ヤバい経済学』ヤバい経済学 [増補改訂版]作者: スティーヴン・D・レヴィット/スティーヴン・J・ダブナー,望月衛出版社/メーカー: 東洋経済新報社発売日: 2007/04/27メディア: 単行本購入: 1
困難を極める学生の就職活動に関する記事はこれまでにも何回か配信してきましたが、結局企業が欲している学生とはどんな学生なのでしょうか。 人材コンサルタントの常見陽平氏の著書『くたばれ!就職氷河...
虚構と現実―社会科学の「有効性」とは何か (1984年) 作者: 佐和隆光出版社/メーカー: 新曜社発売日: 1984/01メディア: ?この商品を含むブログ (1件) を見る■内容【個人的評価:★★★★−】 ○はじめに 既成経済学は以下の三点で非難されている。 1.科学性の衣の下にイデオロギーという鎧が見え隠れしている。 2.理論が現実離れをしている 3.社会問題を解決するための処方せんがかけない 経済学批判について省察してきたが、およそ次の点にまとめられる。 1.経済学批判の背後には、ベーコン主義(帰納主義)またはポパー主義(反証主義)という素朴な科学観が侵すべからざる聖域として控えていた。こうした旧来の科学観に根源的な修正を図る必要がある。 2.経済学の有用性は、医学や工学とは異なる。経済学者による政策提言は相対立する政治集団のいずれかの主張をたんに合理化するための方便に過ぎない。(
変貌する民主主義 (ちくま新書) 作者: 森政稔出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2008/05/01メディア: 新書購入: 10人 クリック: 123回この商品を含むブログ (67件) を見る 本書では現代の一見退屈に見える民主主義の実際の背後に、じつはそれを変える思想の次元で大きな変化があり、いつのまにか民主主義の思想的前提のうち、かなりのものが入れ替わったことを示そうとしてきた。民主主義思想は、反民主主義に対する闘争という面を決して失ったわけではないとしても、重点が変化し、民主主義を受け入れる多様な人々のあいだの複雑な共存ルールへとしだいに変化してきている、というのが本書の見方である。社会は複雑化し、紛争は多発し、状況は見通しがたく、このような変化が人類に幸福をもたらすかどうか、一概にいえないが、このような変化をなかったものとして後戻りすることはできないという意味では、この過程は
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。 田川研という人が書いた『蝶も蛾もうつくしい』という本をわざわざ注文して買いました。要するに「蝶は美しいから誰にも好かれ、蛾はその反対に嫌われる。でもよく見てごらん。蛾も美しいんだよ」という「蛾賛美」本です。オオシモフリスズメという蛾がいるそうです。この蛾は、止まる時に羽をぴったり体に沿わせ、腹部を真上に反らせて止まるのだそうで、それを「なんてカッコいいんだ。まるでチョコレートパフェじゃあ!」などという人たちがいて、そのオオシモフリスズメを捕まえるために、夜明けの高速道路のサービスエリアにわざわざ出かけていくのだ、というようなことが書かれています。(注) 鳥師匠変態三丸さんに言わせると「虫に夢中の人たちが一番変!」だそうです。まぁ、五十歩百歩と思うけど…。 世の中、変な人たちがあち
今年もやってまいりました、年間ベストを選出する企画「誰が得するんだよこの本ランキング」です。気持ちとしては「誰が損するんだよこの本ランキング」にしたいところですが、ブログ名との兼ね合いでこのタイトルになっています。実用書と小説それぞれベスト10を発表するので計20作です。 去年のランキングはこちら。 誰が得するんだよこの本ランキング・2009 実用書 第10位 佐藤優「国家の罠」 鈴木宗男と共に国策捜査で起訴された外務官僚の暴露本。なぜ起訴されたのか、検察官との尋問でどのように議論したのか、そもそもこの捜査は国益にかなうものだったのか、など興味深いトピックが目白押しです。検察による役人の不当な起訴がなされ、検察の暴走だとか言われている今こそ読むべき一冊でしょう。また、ノンフィクションとしてすさまじい面白さがあり、文才を感じさせます。 実用書 第9位 リチャード・セイラー, キャス・サンステ
人口減少時代の大都市経済 ―価値転換への選択 作者: 松谷明彦出版社/メーカー: 東洋経済新報社発売日: 2010/11/12メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 31回この商品を含むブログ (8件) を見る昨今、「地方の衰退」が声高に叫ばれている。急速に人口減少する地方が、未だなお少しずつ人口が増加している都市部、特に首都圏と対比的に語られることが多い。もっとも、東京も決して安泰ではない、という主張もわずかながら存在する。たとえば、『実測!ニッポンの地域力』など。この本も基本的に同じアプローチで、大都市を待ち受けている危機を、より詳細に述べている。 こういう夢も希望もない本を読むと心躍るものがある。そして、ついあの歌を口ずさんでみたくなるのだ。 追記 肝心の本の内容を紹介していなかった。そのかわりに著者へのインタビュー記事を見つけたのでリンク。
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