【北京=矢板明夫】米海軍の駆逐艦が南シナ海で中国が建設している人工島の12カイリ内を航行したことは、中国の習近平政権に大きな難題を突きつけたといえる。中国は、米国と全面対決したくないのが本音だが、これまで国内外に「主権問題は絶対に譲れない」と主張してきたため、口頭抗議だけで済ますのは難しい。中国当局は今後、国内の民族主義勢力と国際情勢の両方をにらみつつ、米国への「報復措置」を探るが、対応を誤れば習指導部の責任を問う動きに発展する可能性もある。 9月に公式訪米した習近平国家主席は、総額4兆6000億円を使ってボーイング製旅客機300機を購入し、講演では「中国人は米国人の創造の精神を尊敬する」と述べるなど親米ぶりを懸命に演出した。中国の官製メディアは「緊張を緩和させ、信頼関係を築いた旅」と宣伝した。 しかし、帰国からわずか1カ月後、米中が南シナ海で軍事的な対立状況に突入したことは、習主席が訪米