弓なりの浜は、美しい。しかし意外にも、海岸線に沿ってカーブする駅はそう多くない。JR紀勢線の湯川駅(和歌山県那智勝浦町)は、小さな湾の曲線を体感できる貴重な駅だ。ホームの端に立てば、マリンブルーの美しい渚(なぎさ)と、湾を囲む山々、そして旅情をかき立てる鉄路を一望できる。(訪問:2016年8月) 歩くだけで楽しい、長大なホーム 紀伊半島のほぼ南端に位置するリゾート地、和歌山県の南紀勝浦温泉。その玄関口である紀伊勝浦駅からわずかひと駅のところに、湯川駅はある。 訪れたのは、2016年の8月上旬。早朝に勝浦の温泉宿を出て、午前7時過ぎにやってきた。 ホームで迎えてくれたのは、森浦湾。紀伊半島のリアス式海岸が生み出した小さな湾だ。正面に見えるのは対岸の太地町。足元には湯川海水浴場(2020年から開設中止)の砂利浜。その間をマリンブルーの海面が埋め尽くす。朝の日差しが、波にきらきらと反射してまぶし