例えば、ある手引きに従って人々が街中を散策し、さまざまな物事を発見、体験する。例えば、街中で突然1人が踊りだし、ドキッとする周囲も巻き込んで不思議な空気を演出する。例えば…。 芸術家と鑑賞者の垣根を取り払い、協働しながら魅力的な芸術状況を作り上げる。昨今の現代美術シーンで隆盛ないわゆる参加型アート。本書はその歴史的展開と社会的存在意義、今日的課題を、豊富な具体例を挙げ、克明な分析を駆使して論じられる。 著者は「人々の存在が芸術的な媒体と素材の中心的要素となる」と参加型アートを定義。その発端を20世紀初めのイタリアの前衛芸術運動、未来派の「夜会」とする。そこでは過激な政治的主張と常識を逸脱した芸術的パフォーマンスが観客を挑発し、怒りの爆発を誘った。そしてその手法はファシズムの扇動に用いられたという。以後、社会主義体制のソ連では集団劇という大衆的プロパガンダに、フランスではダダとシュルレアリス