音楽誌『BURRN!』編集長の広瀬和生氏は、1970年代からの落語ファンで、ほぼ毎日ナマの高座に接してきた。広瀬氏の週刊ポスト連載「落語の目利き」より、柳家さん喬と柳家権太楼の『百年目』聴き比べが実現したサプライズについてお届けする。 * * * 4月、国立小劇場での「陽春四景」で柳家さん喬と柳家権太楼の『百年目』聴き比べが実現した。 「陽春四景」は上・下の2回公演で、7日の「上」はさん喬、権太楼、兼好、萬橘が出演。さん喬がトリで『百年目』を演じた。一方、12日の「下」の出演者は権太楼、市馬、白酒、一之輔。トリの権太楼が『百年目』に入った時には驚いた。ネタ出しはなく完全にサプライズ。主催者のリクエストだという。 さん喬は向島の花見で幇間が「七段目の一力茶屋の趣向で落ちを取りましょう」と番頭を煽る。舟から陸へ上がると三味線が入り、由良之助気取りで芸者たちを追いかける番頭の描写が実に楽しそうだ