『眠りの航路』(呉明益 著/倉本知明 訳)白水社 ポストコロニアル小説という言葉がある。ある地域が植民地であったという事実とその歴史が、背景と筋立てそのものに大きな役割を果たす小説である。 台湾の現代文学を代表する作家、呉明益の『眠りの航路』はまさにそんな小説だ。しかもとてつもなくスケールが大きい。 主人公は2人いる。元新聞記者でフリーライターの「ぼく」は、ある日睡眠の不調に気づく。奇妙にも入眠時間が3時間ずつ後ろにずれていき、しかも眠りはとても深く、まったく夢を見なくなる。 もう一人は、「ぼく」の父親で、台北市の「商場」で機械修理の店を営んでいた三郎である。 「商場」とは、飲食、衣類、家電、雑貨、土産物など各種の小さな商店が集まり、上階に住居スペースがついた3階建ての棟がいくつも並ぶ商業施設で、呉明益の別の傑作『歩道橋の魔術師』(天野健太郎訳、白水社)の舞台でもある。 本作でも「商場」は
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