人工衛星等の宇宙機の外表面には、断熱のため、高分子フィルムを積層した多層断熱材(MLI:Multi-Layer Insulation)が広く使用されています。多層断熱材の最外層には、耐熱性、耐放射線、耐紫外線性に優れるポリイミドフィルムが主に使われます。一方、国際宇宙ステーションや地球観測衛星等が飛行する地球低軌道環境(例えば高度700km以下)には、原子状酸素(AO:Atomic Oxygen;太陽の紫外線で原子状に解離した大気由来の酸素)が多く存在し、これとの衝突によってポリイミドを含む高分子材料は浸食されてしまいます。原子状酸素からの保護を目的として、ポリイミド表面には原子状酸素に耐性を有する酸化物(シリカ等)や金属膜をコーティングすることが一般的ですが、これらの膜は小さな割れの発生など、損傷しやすい欠点があります。原子状酸素は非常に小さいため、細かな割れにも侵入し、ポリイミドフィル