茨城県水戸市の歓楽街にそびえる、あの廃虚が姿を消した。ツタで覆われた壁、その間からのぞく巨大なトランプのクイーン。見ようによっては中世ヨーロッパの城を思わせ、市民から「トランプ城」と呼ばれた建物だが、今春、約四十年ぶりに真新しく生まれ変わった。現地を訪れると、さまざまな声が飛び交っていた。(長崎高大) 今月上旬の夜、知人の男女と連れ立ってトランプ城を目指した。水戸駅から車で十分ほどの水戸市天王町。周囲には風俗店がひしめいている。とはいえ、大きなカメラをぶら下げた三人組をうさんくさく思ったのか、客引きは誰も声をかけてこない。