18世紀、有色人種とりわけ黒人がその肌の色のみで差別され、奴隷として働かされていた時代に、ヨーロッパで一兵卒から将軍にまで上り詰めた有色人の男がいた。180センチを超える体躯(当時としてはかなり大きい)とハンサムな容貌の持ち主であったという。そして、その美しい肉体の中には常人では及ぶことの出来ない勇敢さと情熱を、また公正で高潔な精神を宿していた。男は自らをアレックス・デュマと名乗っていた。本名はトマ=アレクサンドル・ダビィ・ド・ラ・パイユトリ-という。 彼はフランス人貴族と黒人奴隷の女性との間にできたムラートであった。自由、平等、友愛を謳うフランス革命に共感し革命の擁護者として、その軍事的才能を発揮し敵であるオーストリア兵からは「黒い悪魔」として恐れられた。 デュマは人種的差別が公然と行われていたヨーロッパで白人将兵の指揮をとり、彼らから信頼と尊敬の念を勝ち取っていた。祖国フランスが、肌の