国の持続化給付金事業を巡り、委託先の一般社団法人サービスデザイン推進協議会が入札への参加を決めた四月の理事会に、当時の笠原英一代表理事(今月八日に退任)が欠席していたことが分かった。巨額な国の事業の応札をトップ抜きで決める法人のいびつな実態が浮かんだ形。経済産業省はこれまで「代表理事は出席していた」と明言しており、説明が虚偽だったことも判明した。 (大島宏一郎、桐山純平) 【関連記事】給付金業務「関わっていない」 笠原英一代表理事、1問1答 【関連記事】持続化給付金の受託法人、代表理事が辞職へ 【関連記事】給付遅れるコロナ「持続化給付金」 769億円で受託した法人の不透明な実態 給付金事業に関する競争入札は四月八日に公示され、法人は前日七日の理事会で応札することを決めている。法人の広報担当者は本紙の取材に「笠原氏は都合で欠席しており、事後に報告し、承認いただいている」と認めた。 経産省の担
中小企業に最大二百万円を支給する持続化給付金で、一般社団法人サービスデザイン推進協議会から事業の再委託を受けた広告大手の電通がさらに、人材派遣のパソナやIT業のトランスコスモスに業務を外注していたことが分かった。法人の設立に関与したこの三社が給付事業の大部分を担っており、実体に乏しい法人を経由して、国の委託費を身内で分け合う不透明な構図が浮かんだ。(森本智之、桐山純平) 経済産業省が一日、国会の野党合同ヒアリングで明らかにした。法人の職員全員が、三社を含む設立に関与した企業からの出向者であることも判明。給与は法人と元の企業の双方から出ており、野党議員からは法人の存在意義を問う声が強まった。 法人から七百四十九億円で業務の大部分の再委託を受けた電通は、給付金の申請の受け付け業務を四百五億円でパソナに外注、トランスコスモスにもコールセンターの運営を任せていた。給付金の振り込み業務についても、法
国の持続化給付金事業を担う一般社団法人サービスデザイン推進協議会が設立から四年で、同事業を含め十四事業を計千五百七十六億円で経済産業省から委託されていた。うち九件を、広告大手の電通や人材派遣のパソナなどに再委託していたことも判明。残りの五件でも事業の大半を外注していた例があり、法人本体の実体の乏しさがより浮き彫りになった。 (森本智之) 過去の再委託の事例は経産省が国会議員に示した資料で明らかとなった。法人が再委託をした事業九件のうち、電通グループに七件、パソナには二件と法人の設立に関与した企業を中心に事業を回していた。 法人の不透明さが発覚する発端となった持続化給付金では、委託費の97%に当たる七百四十九億円が再委託費として電通に流れている。電通が設立に関与した法人から電通に事業が再委託される経緯について、両者はこれまで「回答を控える」としている。経産省は現時点で、持続化給付金以外の事業
埼玉県深谷市の市立中学校が、政府が全世帯に配布した布マスクについて「アベノマスク着用」と強要するような文書を、生徒に配布していたことが分かった。市教育委員会は「強制の不安を与える表現があった」として二十五日、同校に対応を要請。学校側は「各家庭でご用意いただけるマスクでかまいません」とのメールを保護者に配信し、謝罪した。 市教委などによると、文書は臨時登校日だった二十二日に三年生に配られ、次の登校日の二十七日の持ち物として「アベノマスク着用(別のマスク着用生徒については携帯しているか)の確認」とあった。「個別指導」の欄には「アベノマスク(着用または持参)を忘れた生徒は少人数教室に残る」とも書かれていた。 内容に驚いた保護者が学校に問い合わせ、撤回を求めた。しかし学校側は「国から配られたものなので着用すること」と応じず、「アベノマスクなら全員が所持している」「華美なデザインのマスクでアピールす
新型コロナウイルスの感染拡大防止に重要な役割を担う国立感染症研究所(感染研)に対して、直轄する厚生労働省が国の方針に沿って、出勤者を8割削減するよう指示していたことが分かった。 (市川千晴) 厚労省の担当者は「新型コロナ対策の本丸的な組織であり、頑張らなければいけないので出勤八割削減に葛藤はあるが、感染研を含めた削減は首相の強い指示だ。業務に支障が出ないようやっている」と説明する。しかし、現場の職員からは「総力を挙げて当たる時なのに、こんな手薄な状況でよいのか」と疑問の声が上がる。
東京電力福島第一原発事故の影響で不通が続いてきたJR常磐線富岡(福島県富岡町)-浪江(同県浪江町)間の二〇・八キロで十四日に運行が再開し、茨城県民になじみ深い鉄路が九年ぶりに全線開通する。しかし、不通区間の駅周辺の避難指示は解除されたものの、一帯は放射線量の高い帰還困難区域のままだ。県内の労働組合や沿線住民の間からは、放射線被ばくによる健康被害を懸念する声が根強い。 (佐藤圭、水谷エリナ) JR東日本の社員らでつくる労働組合「動労水戸」の調査によると、試運転で帰還困難区域を通過した車両のフィルターに付着したちりから一キロ当たり二三五〇ベクレルのセシウム137が検出され、放射能濃度は通常の車両より二十三倍も高かった。動労水戸は調査結果を踏まえ、帰還困難区域内を通過する車両の線量測定のほか、車両整備員の被ばく防止教育や防護用具の配備を要求したが、JR側は「車両の測定を実施する考えはない」と拒否
全国の被爆者でつくる日本原水爆被害者団体協議会(被団協)が四月下旬から米ニューヨークの国連本部で開催予定の写真パネル展「原爆展」を巡って、外務省が展示内容の一部を変更するよう被団協側に要求していることが分かった。東京電力福島第一原発事故の概要を伝えるパネルが含まれていることを問題視し、変更されなければ後援しない可能性を示唆しているという。被団協は「表現の自由に触れる問題だ」と批判。識者も「圧力」と指摘する。 (木谷孝洋、関口克己) 原爆展は、五年に一度開かれる核拡散防止条約(NPT)再検討会議に合わせて四月二十七日から約一カ月間、国連本部のロビーで開く。被爆直後の広島、長崎の様子や被爆者の写真、核廃絶へのメッセージを約五十枚のパネルで伝える。 外務省が問題視するパネルは、福島とチェルノブイリの原発事故をテーマにした二枚。福島のパネルでは、東日本大震災で起きた事故の経緯や多くの避難者を出した
テヘラン南部で21日、ISに殺害された友の墓を訪れた革命防衛隊の兵士。「米国がイランを攻撃すれば同じく身をささげる」と話した イランの首都テヘランは今月下旬、国会議員選よりも新型コロナウイルスの話題で持ちきりだった。二十一日、投票を終えた男性が、声を掛けた記者に拳を突き出してチョコンと合わせた。感染を避けるため、握手の代わりに推奨されているあいさつだ。「やあ、コロナは大丈夫かい」 二十七日時点で死者二十六人に達した感染拡大を巡り、国民に疑念が広がる。政府は一月末に中国との航空便を停止した。なのになぜ流入を防げなかったのか。地元記者はある可能性を指摘する。「マハン航空が運航を続けていた」
内閣府は二十日、二月の月例経済報告を発表し、国内景気の判断を「緩やかに回復している」と据え置いた。だが、十七日に発表された二〇一九年十~十二月期の国内総生産(GDP)はマイナス成長に沈むなど、経済指標と政府の見解が食い違う状況が続いている。新型コロナウイルスによる肺炎(COVID(コビッド)19)の感染も拡大する中、市場関係者からは、景気は既に後退局面に入ったとの見方もくすぶる。 (大島宏一郎) 「緩やかに回復」との表現は、一八年一月から二年以上続く。今回は新型肺炎の影響に「注意する」との文言を盛り込んだが、個人消費は「持ち直している」、生産は「引き続き弱含んでいる」などと主要な項目の判断は据え置き、景気全体の見解も変えなかった。西村康稔(やすとし)経済再生担当相は記者会見で「有効求人倍率など雇用は改善している」と説明した。 一方、最近の経済指標は悪化が目立っており、政府見解とのずれが生じ
森雅子法相は二十日の衆院予算委員会で、東京高検の黒川弘務検事長の定年延長を可能にした法解釈変更を巡り「前から制度はあったが、適用されなかった。今回適用されるように解釈した」と語った。十日前には、延長が可能になった時期を一九八五年からと答弁しており、野党に矛盾を追及された。十九日の審議でも、人事院の局長が一週間前の答弁を修正。定年延長に関する政府の説明は破綻状態に陥っている。 (清水俊介) 森氏は二十日の衆院予算委で、検察官の定年延長が可能になった時期について「政府見解として一月二十四日と統一的に確認した」と強調した。十日の審議では「改正国家公務員法が一九八五年に施行された時」と明言していた。 国民民主党の後藤祐一氏は「矛盾している」とし、答弁の修正・撤回を求めた。森氏は応じず「八五年当時は、制度はあっても適用されないという解釈だった。今回、制度があり、それを適用できると解釈した」との答弁を
ソフトバンクの機密情報漏えい事件で、情報を受け取った疑いがある在日ロシア通商代表部の代表代理で外交官アントン・カリーニン氏(52)が、ロシア対外情報局(SVR)で科学技術情報を収集する「ラインX」と呼ばれるグループに所属していたとみられることが、捜査関係者への取材で分かった。 接触場所は飲食店だけでなく神社の境内も使い、報酬は情報ごとに数万~数十万円だったことも判明。最先端技術の周辺にいる人物を狙い、自分の名前も明かさないまま情報を抜き取る「典型的なスパイの手口」(捜査幹部)による工作活動とみられ、警視庁公安部は警戒を強める。 「あの日本人は誰だ」。公安部がひそかにカリーニン氏の動向を調査する中で、接触を重ねる一人の日本人が浮上した。その後の捜査でソフトバンクのモバイルIT推進本部無線プロセス統括部長(当時)の荒木豊被告(48)=不正競争防止法違反罪で起訴=と判明。社内では「真面目な人間」
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