1カ月前の往診の際に神経ブロック注射を打ったオさんのその後が気になって、私は電話をかけた。1週間前までは椎間板ヘルニアの痛みがとてもよくなったと感謝してくれていたが、声がさえなかった。腰の痛みがぶり返してしまったそうだ。話を聞いてみると事情は次のようなものだった。 痛み止めの注射を打ってよくなったため、久しぶりに田舎市に行った。買わないようにしようと思いながらも、実際に見てみると欲しくなって山菜、大根、さつまいもを買った。問題はその次だ。駅で降りて買ったものを積んで家に帰らなければならないが、タクシーが拾えなかった。最近はカカオタクシーアプリが使えないと、タクシーにを捕まえるのは大変だ。若い人たちは必要な時にすぐアプリでタクシーを呼ぶが、ほとんどの高齢者はそうはいかない。仕方なく重い荷物を両手に抱えて家まで歩かなければならなかったオさんは、結局椎間板ヘルニアに衝撃が加わって寝込んでしまった
濃い霧に包まれた晩秋の夜、ジュネーブ中央駅に電車がなんとか停止した。10人ほどの韓国人が注意深くプラットホームに足を踏みだし周囲を見回した。私は急いで近づき、「遠路はるばるようこそ」とあいさつした。一行の目には嬉しさと断固さが重なってにじんでいた。「骨を埋める覚悟でここに来ました」。20年前、韓国ネスレの労働者のスイス遠征闘争はこうして始まった。 正直なところ、私はその悲壮で断固とした覚悟が不安だった。緻密な戦略もなく、頼るべきところのないスイスに来て、見通しのない闘いをどうするつもりなのか。一行を迎えに来ていた国際食品労連の関係者の表情も不安そうにみえた。だが、彼らの闘いにはためらいがなかった。労働者の賃金引き上げ要求に対してネスレは、韓国工場の海外移転という脅しで対抗し、100日以上ストライキが続いており、これを問い詰めるためにネスレ本社を訪れに来たということを、休む暇もなく伝えた。
2019年8月、「ハンギョレ21」で開かれた対談に参加した徐京植さん=キム・ジンス記者//ハンギョレ新聞社 在日朝鮮人2世として故国の民主化運動にかかわっただけでなく、辺境人または離散者(ディアスポラ)として韓日両国に国家主義と植民主義を乗り越えることを求めてきた徐京植(ソ・ギョンシク)東京経済大学名誉教授が死去した。享年72。 19日午後、徐京植さんの家族は、徐教授が前日夕方、日本のある温泉で突然亡くなったと伝えた。徐京植さんの祖父は1928年に朝鮮から日本に渡り、本人は1951年に5人兄弟のうち4番目として生まれた。「在日朝鮮人としては比較的恵まれた」家庭で育ち、十分に教育を受けた徐京植さんは早稲田大学に進学してフランス文学を学んだ。 しかし、大学在学中の1971年、韓国に渡ってソウル大学に留学していた2人の兄、徐勝(ソ・スン)さんと徐俊植(ソ・ジュンシク)さんが、軍事政権がでっち上げ
7日(現地時間)イスラエル軍がヨルダン川西岸地区のパレスチナの都市ジェニン地域の難民キャンプを攻撃するなか、イスラエル軍のヘリコプターが照明弾を発射して通り過ぎている=ジェニン/新華・聯合ニュース ロシアのウクライナ侵攻1年を迎え、祝うべき唯一のことは、ウクライナがみせた抵抗だ。これは、同盟国だけでなくウクライナ人自身も驚いたことだった。ウクライナの勇敢な抵抗は、さらに別の肯定的な変化につながった。あるウクライナのジャーナリストはこのように評する。「ウクライナ人は戦争の状況でも自国の正義に対する熱望を失わずにいる。ウクライナ人の大半が命をかけてロシアの大量虐殺の脅威に対抗していることを考えると、ウクライナの正義に向かう熱望は以前よりさらに強まったといえる。ウクライナ人は、自分たちの国がどのような方向に進まなければならないのか、戦争が終わった後にはウクライナがどのような姿にならなければならな
朝鮮半島平和プロセスへの悪影響を懸念 政権交代期に韓ロ関係管理 ロシア進出企業の被害、エネルギー・原材料供給網の懸念などを考慮 文在寅大統領が22日午前、大統領府国家危機管理センターで開かれた「2022年度国家安全保障会議および対外経済安保戦略会議連席会議」で資料を見ている=大統領府提供//ハンギョレ新聞社 米国とロシアが対立しているウクライナ情勢に対し、韓国政府の対応は極めて「慎重」な基調だ。ロシアがウクライナ東部のドンバス地方の親ロ共和国を独立国家と認めて兵力投入を発表すると、米国、欧州連合(EU)、ドイツ、英国、日本、カナダ、オーストラリアなどがロシアへの制裁措置を発表したが、韓国政府は「制裁」を口にしないという状況が代表的な例だ。 政府の対応基調は「ウクライナの主権・領土保存の尊重」と「対話を通じた平和的解決に国際社会の責任ある一員として積極的に参加」という側面では米国などと歩調を
『北に渡った言語学者:金壽卿1918-2000』(人文書院)。人類学者である同志社大学社会学部の板垣竜太教授(49)が7月に日本で出版した、言語学者の故・金壽卿(キム・スギョン)(1918~2000)氏の評伝だ。 日本の植民地時代に京城帝国大学法文学部哲学科を卒業し、東京帝国大学大学院で言語学を学んだ金壽卿は、「朝鮮の言語の天才」と呼ばれた。江原道通川(トンチョン)出身の彼が、植民地支配からの解放までに習得した外国語は、ギリシャ語、ラテン語、サンスクリット、英語、ドイツ語、フランス語、ロシア語、イタリア語、スペイン語、ポルトガル語、デンマーク語、日本語、中国語、モンゴル語、満洲語の15言語にもなる。「金壽卿が金日成大学の在職時に、フランス語の原書を直読直解して授業したことが、今でも同大学での伝説的な講義になっています。合わせて7言語でそのまま原書を読みながら教えることができたと言われていま
習近平思想を「21世紀のマルクス思想」としてまつり上げる中国共産党が、不平等に立ち向かって労働者を支援する左派学生を弾圧する現実は、奇妙な問いを投げかける。習近平指導部が掲げるマルクス主義の旗と、大学生や労働者が掲げるマルクス主義の旗のうち、どちらが本物なのか。 沈夢雨が2018年夏、佳士科技の工場労働者の労組設立を支援する活動の中で撮った写真。シャツには「団結は力だ」と書いてある=微博より//ハンギョレ新聞社 2015年6月、沈夢雨(28)は中国南部に位置する広東省広州の名門、中山大学で数学・コンピューターを専攻し、修士号を取得した。最先端の情報通信(IT)企業に就職し、華やかな生活を送るには十分なスペックだった。彼女が選んだ道は、工場労働者だった。沈夢雨は「瞬間の興味のためではなく、私の人生の旅路に深く根ざした選択」と語る。 彼女は、大学でサークル活動に参加したことで労働者の現実に目覚
2018年5月24日、咸鏡北道吉州郡豊渓里の核実験場の爆破シーン。管理指揮所施設を爆破した瞬間、木造の建物が粉々になった/聯合ニュース 2008年6月27日、平安北道寧辺郡の原子炉冷却塔の爆破シーン(左から)。16日の開城南北共同連絡事務所の爆破シーン。2018年5月24日、咸鏡北道吉州郡豊渓里の核実験場の爆破シーン/朝鮮中央通信・聯合ニュース 北朝鮮は重要な節目ごとに「実践の意志」を示すための方策として「爆破」を選択してきた。建物が一瞬にして灰となるスペクタクルを演出することで、対外的に強烈なメッセージを伝えてきたのだ。 2006年10月に1回目の核実験を行った北朝鮮は、米国と交渉を行なった末、米国がテロ支援国家指定を解除すれば原子炉の冷却塔を破壊することに同意した。2008年6月27日午後5時5分には、実際に平安北道寧辺郡(ヨンビョングン)にある原子炉冷却塔を爆破し、核の不能化の意思を
[脱北団体の「北朝鮮へのビラ散布強行」物議] 散布に反対する脱北民 「自由北韓運動連合、米国の保守団体に 活動内容を伝え、援助受けている」と主張 同連合「米国同胞たちが送ってくれたもの」反論 2014年10月、脱北民団体が京畿道坡州市炭県面の統一の丘駐車場で北朝鮮へのビラをつけた風船を飛ばしている様子=パク・ジョンシク記者//ハンギョレ新聞社 北朝鮮のキム・ヨジョン労働党中央委員会第1副部長ら、北朝鮮政府高官たちの強い反発を招いた対北朝鮮ビラは、先月31日に自由北韓運動連合が撒いたものだ。パク・サンハク氏が率いるこの団体はその日、ビラ50万枚、小冊子50冊、1ドル紙幣2000枚、携帯用保存媒体(USBメモリ)1000個を大型風船にぶら下げて飛ばした。 同団体のホームページを見ると、「第7期第4回党中央軍事委で、新たな戦略核兵器で衝撃的な行動をとるという偽善者金正恩(キム・ジョンウン)」とい
スピーカー使用自粛など要求、「不許可もありうる」 行事を妨害した右翼団体、「我々が認められた」と喜び 小池知事就任後、朝鮮人虐殺追悼文の送付を拒否 ノンフィクション作家「衝突理由に行事を中止させられる恐れ」 昨年9月1日、東京都墨田区の横網町公園で開かれた関東大震災96周年朝鮮人犠牲者追悼式典で、市民たちが追悼碑の前に献花し黙祷している=資料写真//ハンギョレ新聞社 毎年9月1日に東京墨田区の横網町公園で開かれる関東大震災朝鮮人虐殺犠牲者追悼式の開催に、東京都が一種の「順法誓約書」の提出を要求して、物議を醸している。行事を主催する日本の市民団体は、追悼式の開催を萎縮させかねない内容だとして撤回を求める声明を出した。 18日の「9.1関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式典実行委員会」(以下「実行委」)の話によると、東京都は昨年12月24日、今年の行事開催のために誓約書を提出するよう要求してきた。誓約
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
処理を実行中です
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く