5日の豪雨で被害が集中した福岡県朝倉市杷木松末(はきますえ)。18世帯59人が暮らしていた石詰集落では、川幅が10倍ほどにも広がった乙石川に、住宅の半数以上が流された。今も4人の安否がわかっていない。 石詰で生まれ育った観光バス会社社長の小嶋嘉則さん(73)が、ひどい雨にあわてて自宅へ戻ったのは5日午後1時ごろ。自宅は、道や隣家を挟んで、川から約30メートルの高台にあった。 だがまもなく、上流から押し寄せた土砂が川床に積もって水かさが増し、小嶋さんがいた母屋に向かうように川が流れを変えた。川とは別の谷の方向からも、えぐられた田んぼが押し寄せてきた。 「これはいかん」。カッパを着て外に出たが、母屋の隣の土蔵も流されていた。妻の文代さん(70)や、小嶋さん宅に避難していた隣人ら計5人で山に登ることを決めた。 「登れー」という小嶋さんの声を聞いた文代さんは「あっという間だった」と振り返る。もう母