ウォルター・アイザックソン(「スティーブ・ジョブズ」著者) 翻訳:松村保孝 公認伝記『スティーブ・ジョブズ』を私が書くにあたって取り組んだ疑問の一つは、果たしてジョブズはどれほど頭がいいのか、ということだった。一見、大して問題にすべき事柄ではないように見える。誰もが、答えは明白、ジョブズは本当に本当に頭が良かったのさ、と思うだろう。多分、ホントウの数を3回か4回くり返すに値したのだろう。 なんといってもジョブズは、われわれの時代にもっとも成功した革新的なビジネスリーダーであり、両親の家のガレージで事業をおこし、それを世界で最も価値ある企業に作り上げたことで、その名はシリコンバレードリームを特筆大書で体現していたわけだから。 しかし私は、ジョブズの家のキッチンテーブルで彼と数ヵ月前に夕食を共にした時のことを思い出す。その頃の彼は、ほとんど毎夜そうして妻子と食事を共にしていたのだ。中の誰かが