講演者 塩野直之(東邦大学) 講演タイトル 行為の選択における判断の役割と動機の役割 講演概要 われわれは、なるべく理性的な判断に基づいて行為したいものである。しかし人は結局、自らを最も強く駆り立てる欲求ないし動機に即して行為せざるをえない。これは、「動機の強さ」という概念の定義から生じるトリヴィアルな帰結だとさえ言える。とはいえ人は、ある欲求を充足すべき欲求ではなく消去すべき欲求とみなしたり、目先の行為を単一の行為ではなく何度も繰り返される一連の行為の一例とみなしたりすることにより、多少とも思慮深い行為を遂行できる場合がある。そしてこのことは、理性的な判断が行為の選択に対して一定の影響を及ぼしうることを示すように思われる。しかし、本当にそうだろうか。むしろ、そのような一見理性的な判断自体が、欲求や動機のダイナミックなせめぎあいの結果として形成されるのではないだろうか。本発表はこのような問