■「科学」と「食文化」の間で 3月、国際司法裁判所は、05年から行われている日本の第2期南極海調査捕鯨の中止を命じた。科学性を否定しての判決だが、報道では「食文化の危機」を訴える論調も多かった。捕鯨をめぐっては、科学と文化両方の側面が議論されてきた。 では、ここでいう科学とはどういうものか。調査捕鯨に関わる研究者らが編んだ『鯨類生態学読本』が詳しい。IWC(国際捕鯨委員会)の資源管理の変遷から最近の数理的モデルまで概観し、南極海や北西太平洋の捕獲調査についても多くの紙幅が割かれている。出版時期の問題で「第2期南極海」には触れられないが、鯨類資源研究と呼ばれる応用科学の概略を学べる。「鯨を資源として捉える」ことから始まる科学なので、「食べること」とも密接に関係していることが分かる。 ■国と地域の関係 一方、『捕鯨の文化人類学』は、世界各地の先住民族捕鯨、さらに日本と韓国などの捕鯨の文化を考察