現代日本語で「直《す》ぐ」と書けば、「時間や距離の離隔の僅少な様」とでも謂った意味の副詞として諒解されるのが普通である。つまりは「これ直ぐ頼むわ」とか「直ぐに判るさ」とか「その店なら直ぐ眼の前ですよ」とか「直ぐ隣に在った」とか謂った用法に於ける「直ぐ」である。 さて、日本語には接頭辞「真」が在る。望ましい状態や純粋な状態を強調する際に前置される語であり、例せば「真っ正直」「真っ暗」等が挙げられ、この「真」を「直ぐ」に前置すれば、「真っ直ぐ」となる。 「真っ直ぐ」の意味を一言で表せば「少しも曲らない様」あたりが妥当な所か。何にせよ、「時間や距離の離隔」を云々する概念ではなく、いくら「直ぐ」を修飾しても「真っ直ぐ」には繋がらず、要するに先述の「直ぐ」とは殆ど関係が無い言葉に見える。だが、実際には勿論無関係ではない。「直ぐ」とは、「『真っ直ぐ』な様」を表す語でもあるのだ。第一、さにあらざれば、語