イスラエルの作家アモス・オズ(Amos Oz, b.1939)は、エルサレムに生まれ、ヘブライ大学で哲学と文学を専攻、1967年の「六日戦争」(第三次中東戦争)及び1978年の「ヨム・キプール戦争」(第四次中東戦争)に従軍した。『イスラエルに生きる人々』(In the Land of Israel)は1982年6月に始まった第二次レバノン侵攻の数か月後にオズがイスラエル国内を駆け巡り「同胞の声」を聴き取り、彼らと議論し、そこから民族の「確執史」を導き出したものである。 以下に引用するのは、「あるところではちょっとは知られた経歴の持ち主」である50歳前後の”Z”という男性の声。イスラエルの地で聞かれる一つの声であり、同じユダヤ人でありながら、しかし「別の同胞」である人々に対する思いが率直に語られる──そこに横たわる確執の主題を作家であるアモズ・オズが読み取り、拾い上げ、ときに「それ」を促し、