12月末、イラクのフセイン元大統領が絞首刑に処せられた。罪状は人道に対する罪。フセイン氏の異父弟で情報機関トップのバルザン・イブラヒムとアワド・バンダル元革命裁判所長官も、同様に翌1月に処刑された。途中、弁護人3人が殺害され、裁判長がイラク政府高官による法廷介入を理由に辞任、死刑執行時にシーア派の執行人らが元大統領を罵倒している映像が流出するといった波乱の展開に、果たしてこれが正義の裁判なのか、疑問に感じた人も多いのではないだろうか。 「人道に対する罪」は国際法上の犯罪で、戦時法規違反(狭義の戦争犯罪)、ジェノサイド罪と並んで広義の戦争犯罪に含まれる。これは「組織的または大規模な攻撃の一環として行われる民間人に対する非人道的な行為」(国際刑事裁判所設立規定7条)で、殺人、大量殺人、奴隷化などが含まれる。第二次世界大戦後に、連合国がユダヤ人を虐殺したナチス・ドイツの指導者の責任を追及するニュ