はじめに ポスト冷戦以降の資本主義のグローバリゼーションの最も大きな特徴は、国民国家の枠組の緩慢だが確実な解体現象である。しかも、この解体は、資本主義に対抗する勢力によってもたらされたというよりも、資本主義それ自体が、国民国家の枠組を桎梏とするほどに肥大化した結果(あるいは肥大化しなければ維持できない)でもあった。 従来、グローバルな資本主義の展開は、国境を越える市場経済の構造を利用して、資本や公的な資金、労働力(移民労働者)、商品が移動する一方で、こうした金、人、モノをめぐる国内の統治については、あくまで国内法と国家の統治権力が優先されてきた。帝国主義や植民地支配といった資本主義の世界性の歴史的な経験は、常に、国民国家の枠組を強化し、外部に拡張することを通じて展開されてきた国民国家相互の軋轢、国民国家としての独立を目指す植民地の闘争という構図に収まるものといえた。 しかし、九〇年代後半に