インド料理には「食材を細かく粉砕する」作業が欠かせません。スパイスの原形を調理場で細かいパウダー状に粉砕したものは、最初から粉の状態で流通するもの(パウダースパイス)よりも、はるかに鮮烈でフレッシュな香りがするためです。ほかにも硬い豆をきな粉のように粉に挽いて使う料理もあります。 ニンニクや生姜などの香味野菜をペーストにしたものは、あらゆる料理に欠かせませんし、玉ねぎやほうれん草、ココナツなどのペーストも頻繁に使われます。また、そういった複数の食材やスパイスをまとめてペーストにしたものも、南インドなどではよく使われます。 なのでインドでは、各家庭に必ずといっていいほど、そういった作業をこなせる器具があります。かつてその役割を担っていたものは石臼でした。現代ではそれがミキサーなどの電化製品に置き換わっているわけです。 僕が料理長を務める「エリックサウス」でも、もちろん「粉砕する」「すりつぶす