思想家・武道家の内田樹さんが共謀罪について語るこの記事の写真をすべて見る 思想家・武道家の内田樹さんの「AERA」巻頭エッセイ「eyes」をお届けします。時事問題に、哲学的視点からアプローチします。 * * * この原稿が掲載される頃には、「共謀罪」の衆院審議は終わっているかもしれない。共謀罪は法としての瑕疵(かし)、審議の異常さにおいて政治史上でも例外的なものだ。安倍首相はこれをテロ対策のための立法であり、成立させなければ国際組織犯罪防止条約を批准できず、国際的な批判を浴びると説明し、これなしでは「東京五輪は開催できない」とまで言い切ったが、いずれも無根拠な発言だった。 穴だらけの、不要不急の法案を、ずさんな審議を通じて成立させようとするのはなぜか。それは「穴だらけの、不要不急の法案を、ずさんな審議を通じて成立させる」ことで、「整合的な法案を、丁寧な審議を通じて、必要なときに成立させ