『ネクロノミコン』の有名な2行連句、邪神クトゥルーの実在と生存を示唆しているといわれる一節の英語訳には、いくつかのバリエーションがあるようです。(参照) それらの間に見受けられる微妙な差異に、わたしはここしばらく頭を悩ませていました。 そして、比較的信頼のおける複数の翻訳のうち、どれが「正しい」ものかを確かめるため、在籍中の大学の図書館に収蔵されている『ネクロノミコン』を参照したいと願っていたのです。 もちろん、『ネクロノミコン』は、はじめから英語で著された本ではありません。 アラブ人アブドゥル・アルハズレッド (アルハザード) によってアラビア語で書かれた『アル・アジフ』を原典とし、ギリシャ語訳、ラテン語訳を経て英語に翻訳されたものです。(文明史的に考察すると中国語訳も存在するとおもわれますが、その版はおそらく現在アクセス可能な英語訳版の系譜にはつながっていない。) それだけ翻訳が繰り返