第二次世界大戦と野球について語られるとき、野球は戦争の被害者であるとされることが多い。戦時中、野球が外来のスポーツとして弾圧されていたことはよく知られている。また「戦争によって亡くなった選手」についてもよく言及される。 もちろん、戦火が野球界にもたらした影響は甚大で、とくに軍人となった選手たちがどのような思いで逝ったか、その心情は想像するに余りある。 ただ、一方でそうした「悲劇」としての側面に焦点を当てすぎるあまり、戦前の野球界全体として戦争とどう向き合ったのか、という視点ではあまり語られてこなかった。 終戦から75年。当時を知る野球関係者の多くがこの世を去り、彼らの証言を聞くことは難しくなった。その反面、野球の歴史をめぐる研究は発展をつづけ、終戦直後にはなかった新たな視点による分析や考察も出そろいつつある。 そもそも、野球界にいわゆる「軍靴の音」が迫ってきたのはいつ頃の話なのだろうか。そ