生まれた時から、家庭ではアイヌ語での日常会話がなかった。民族の証しは言語が担う。だからこそ、アイヌ語にこだわり、独学で身につけた。 「ニシパウタラ(紳士)、カツケマカツウタラ(淑女)、ウウエカラパワケヤイコプンテク(お集まりいただきうれしく思います)」。1月21日に北海道江別市で開かれたアイヌ民族党結党大会はアイヌ語で始まった。 大卒後、東京のコンピューター会社で働いていた。父茂氏はアイヌ民族初の国会議員(参院)。反発はなかったが、「商才があるんだから金もうけをした方がいいのに」と冷めた目で見ていた。 だが、29歳だった87年に父に誘われ、カナダの先住民族(クワクワカワク)を訪ねた。70代以下は英語しか話せず、子どもへの言語教育に取り組む姿を見て、「我々も一緒だ」と目覚めた。父のアイヌ文化・言語保存活動を手伝うため、翌88年に北海道平取(びらとり)町に帰郷、アイヌ語を学び始めた。 父は、ア
日本列島の南と北に分かれた、沖縄(琉球)人と北海道のアイヌが遺伝的に同系統かどうかという100年越しの議論が、新たな展開を見せている。今月初め、沖縄で初めて開かれた日本人類学会の大会(第65回)で、沖縄と本州の出土人骨から縄文人の顔つきを比較した、興味深い発表があった。 アイヌと沖縄人には、縦方向に短い顔、大きく丸い目、二重まぶた、湿った耳あか、毛深さなど共通する身体特徴がある。 これは明治時代に日本に招かれたドイツの病理学者ベルツが1911年の論文で指摘し、「アイヌ・沖縄(琉球)同系論」と呼ばれている。その後、日本人研究者から「沖縄人に最も近いのは本州・九州人」と批判されたが、80年後の91年に故埴原和郎さん(当時、国際日本文化研究センター教授)が発表した「二重構造モデル」で再評価された。 日本人の形成史について最も有力なこの仮説によると、後期旧石器時代に日本列島にやってきた東南アジア系
印刷 関連トピックス参議院選挙 アイヌ民族による政治団体が北海道で発足することが29日決まった。アイヌ民族が求める施策が実現しないことへの不満と危機感が背景にあり、参院選比例区や地方選での候補者擁立を目指す。政治団体として選管へ届け出をし、年明けに結成大会を開く予定だ。 同日夜、札幌市で「アイヌ民族党(仮称)」結成に向けた準備会が開かれた。代表には、アイヌ民族初の国会議員、故萱野茂・参院議員の次男、志朗氏(53)=萱野茂二風谷アイヌ資料館館長=が就任する見通し。役員には、アイヌ民族最大の団体・北海道アイヌ協会理事や支部長も名を連ねる予定だが、同協会全体として党を支援するかどうかは未定という。同協会によると、アイヌ民族による政治団体の結成は初めて。 参院選比例区には候補者10人程度の擁立を検討。候補者は原則、アイヌ民族とするが、アイヌ民族でなくても党には加入できるという。 続きは朝日新
北海道に赴任して1年。先住民であるアイヌ民族への取材を通して、彼らが受けてきた差別を初めて目の当たりにした。1月には政府のアイヌ政策推進会議(座長・平野博文官房長官)が発足し、アイヌを取り巻く環境は歴史的転換期を迎えようとしている。これを機に、アイヌ差別について改めて考えてみたい。 アイヌ差別の深刻さは、私自身も経験した。アイヌの男性から「アイヌは日本人の底辺層と似ているから、一緒に底上げしなくては。それが共生社会だから」と聞き、地域面のコラムに書いたところ、アイヌを「土人」と差別的表現で書いた攻撃的なはがきが届いた。海外の少数民族問題に関心が高い学識経験者が、アイヌがいまだ貧困に苦しんでいるのは自己責任だと非難したのを聞いたこともある。 推進会議設置の根拠となった「アイヌ政策のあり方に関する有識者懇談会」は昨夏、政府に提出した報告書で「同化政策が進められる中で、アイヌの人々は差別や偏見に
豊かな日本語文化は多くの借用語が支えている。英語やポルトガル語由来の言葉が多いのは知られているが、アイヌ語からもあることを知る人は少ない。水族館の人気者「ラッコ」や「シシャモ」がそうだ。サハリンと大陸の間の海峡に名を残す探検家・間宮林蔵は日本には生息しない角の大きなシカを現地のアイヌが「トナカイ」と呼ぶと報告した。サンタクロースを乗せてくる「真っ赤なお鼻」のあの動物だ。 アイヌ社会は自然との共存が図られていたとされる。そんな伝統も伝えていた、専門店としては東京都内唯一のアイヌ料理店「レラ・チセ」(中野区)が7日閉店した。化学調味料を使わず素材を生かした料理を提供し、店内では「ムックリ」(口琴)の哀愁を帯びた音色も流れる中、会話が弾んだ。 東京は北海道に次いでアイヌの多い土地だが、昨年来の不況で売り上げは激減していたという。阿寒湖畔のコタン(集落)出身の松田弘治店長は「いつか再開を」と語る。
■道方針、協会に指導 道は26日の道議会予算特別委員会で、アイヌ民族の人たちの認定を厳格化する方向で検討する方針を示した。現在の戸籍ができる以前の「改製原戸籍」で確認することなどを検討している。北海道ウタリ協会(現・北海道アイヌ協会)の羅臼支部の会員数が不自然な形で急激な増減をしたことに批判が集まったためだ。また、大学修学のための学費貸与額のほとんどが減免されていたことについても、今後は返還を前提とした制度を設ける考えを示した。 ウタリ協会羅臼支部では96年に会員数が2人だったのが翌年は208人に急増。02年には一転して74人に減少していた。道の調査では、当時の支部長が組織力を高めるため、家族全員を会員としていたという。また、「アイヌの人以外の人も会員になっていたようだという証言も得た」とした。 これまで、アイヌ協会の会員資格は、協会の支部長や市町村長の推薦で決まるところが大き
札幌大学(札幌市、宮腰昭男学長)は26日、アイヌ民族の学生を対象にした奨学生制度を来年度から創設すると発表した。 北海道や同大によると、先住民族を対象とする奨学生制度は全国初。アイヌ文化の担い手を育成するのが狙いで、奨学生には積極的にアイヌ文化活動にかかわってもらう。 アイヌ民族の学生とその他の学生や教員が交流し、多文化共生のあり方を学ぶプロジェクトの一環で、文化学部の学生を対象に上限は6人。4年間で授業料と入学金相当の計約330万円の奨学金を支給する。奨学生はアイヌ語やアイヌ文化、北方史などを履修し、同大埋蔵文化財展示室のサポートスタッフとして活動する。協力企業に学生の育成や優先採用への協力を呼びかける。 アイヌ民族に対しては、道の大学修学資金貸付制度があるが、下宿代などの生活資金には充てられず、経済的事情から中退を余儀なくされる例もある。同大の奨学金は生活資金にも使えるのが特徴だ。 学
「世界先住民族ネットワークAINU」は6日、政府がアイヌ民族を先住民族と認めてから1年になるのを記念して、札幌市内でパネルディスカッションを開いた。 パネラーとして出席した、政府の「アイヌ政策のあり方に関する有識者懇談会」委員の佐々木利和・国立民族学博物館教授は、アイヌ語、アイヌ文化の伝承について、懇談会の各委員が緊急の問題として危機感を持っていることを紹介した。 その上で、個人的考えとしながら、アイヌ民族の65歳以上のお年寄りを「文化伝承者」として認定し、伝承のために必要な資金を国が出す制度の創設を提案した。 このほか、「アイヌ民族が日本の先住民族であることを、どう国民に理解してもらうかが一番大きな問題だ」など、権利回復に向けた課題を指摘する声が上がった。
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