宮殿が慌ただしくなりはじめた。ノイシュタット侯につづき、各諸侯が続々と集まってきた。 フェリクスの次にやってきたのは、アイトルフ侯ヨハンだ。几帳面な性格どおり、選帝会議に遅れないよう、わざわざ早めに来たのだろう。 ただそれが災いして、ヨハンは民からの人気もなければ、実務もうまくいかないことが多かった。 細かいことにこだわりすぎるためだ。 人の上に立つ者はある程度の鷹揚さというか、小さいところはあえて見ない器の広さが必要なのだが、残念ながらヨハンはそのことがまるでわかっていないようだった。 むしろ逆に、領主だからこそ細かいところまで逐一気にすべきだと考えているらしかった。 「見るからに〝ダメ領主〟って感じだな」 「ああ、そうだな」 隣にいた同僚の言葉に、ノイシュタットの近衛騎士、ヨハンは小声で同意した。 あんなのが自分の主(あるじ)でなくてよかったと心底思う。フェリクスとはあまりに対照的であ
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