2021年の東京五輪で選手村に使われた晴海エリアに「TOKYO」とデザインしたモニュメントを建てる東京都の計画が、暗礁に乗り上げている。1億円以上の予算をかけ、子どもたちの遊び場になっている公園に巨大な構造物を置くことに住民らが反発。始まったばかりの工事は中断した。「なぜ、この場所に」の議論は交流サイト(SNS)でも話題を呼んでいる。(加藤健太)
東京電力福島第一原発事故後、関東地方の7都県が事故の影響で必要になった費用として東電に請求した損害賠償額は計325億円に上ったが、そのうち計63億円余の賠償を東電が認めず、支払われていないことが本紙の取材で分かった。専門家は、東電が賠償範囲を決められる仕組みの問題を指摘している。(加藤豊大、鈴木みのり) 事故の影響を受けた都県や市町村などの自治体は東電に対し、臨時職員の人件費▽空間線量計購入費▽風評被害対策PR費—などを請求した。本紙は、このうち関東7都県が請求したものを集計した(市区町村が請求した分は含まず)。東電は、文部科学省の原子力損害賠償紛争審査会が賠償基準を定めた「中間指針」や、それを基に東電が独自に示したガイドラインに基づき、賠償に応じるか判断した。 福島第一原発事故の損害賠償 国が2011年8月に定めた損害賠償の基準となる「中間指針」には「賠償されるべき損害として明記され
参院法務委に参考人として出席した(奥左から)龍谷大の石塚伸一教授、専修大の山田健太教授、法政大の今井猛嘉教授 インターネット上の誹謗(ひぼう)中傷対策として侮辱罪を厳罰化する刑法改正案を巡り、参院法務委員会は7日、参考人質疑を行った。専修大の山田健太教授は、厳罰化が表現の自由の制約につながり、権力に対する「批判の自由」が損なわれるとして「問題は実際に捕まるかどうか以上に萎縮が生まれることだ」と指摘した。 山田氏は「刑事罰を重くすれば犯罪の抑止につながるが、そのために民主主義が壊れることはあってはならない」と主張。侮辱罪の適用対象の多くは、やじやデモなどの「大衆表現」だとして、「恣意(しい)的に刑事罰の対象として取り締まられることは、表現規制の典型例だ」と懸念を示した。
コミックマーケット準備会とコミック文化研究会(代表・杉山あかし九州大准教授)がC88でコミックマーケットが四十周年を迎えたのを記念して実施した。同人誌などを頒布するサークル参加者約三万九千人、一般参加者六百二十七人から回答を得た。回答者の平均年齢は、区分ごとに最も低い男性のサークル参加者が三一・九歳、最も高い女性の一般参加者が三六・三歳だった。 質問で、前年の一四年十二月に行われた衆院選で投票したか否かを尋ねたところ、サークル、一般参加者とも八割以上の人が「投票した」と回答。同選挙では小選挙区の投票率が52・66%で戦後最低。中でも三十代の投票率は42・09%とさらに低かったのと比べ、極めて高かった。
匿名Twitterアカウント「Dappi」による虚偽のツイートで名誉を傷つけられたとして、立憲民主党の小西洋之、杉尾秀哉両参院議員が東京都内のIT関連企業に対して880万円の損害賠償などを求めた民事訴訟の弁論が28日、東京地裁であった。被告のIT関連企業が「ツイートは従業員が私的に投稿した」と主張していることが判明した。(デジタル編集部) 第1回口頭弁論に続き、今回も被告側は出廷せず。法廷での原告側と裁判官のやりとりによると、被告側は従業員が投稿していたことを初めて認めるも「投稿は従業員の私的活動で、会社業務とは関係ない」「会社は被害者」などとする主旨の書面を提出。被告企業によって組織的に投稿が行われたかが、今後の争点になる。 訴状などによると、アカウント「Dappi」は2020年10月、森友学園問題の公文書改ざんを巡り「近財(近畿財務局)職員は杉尾秀哉や小西洋之が1時間吊るしあげた翌日に
政府は21日、菅義偉首相の後任首相を選出する臨時国会の10月4日召集を閣議決定した。憲法53条に基づく野党の召集要求は2カ月以上も放置したのに、自民党総裁選を受けて国会を開く形となった。それに伴い、次期衆院選は初めて議員任期満了(10月21日)を越えて行われるのが確実。不人気の首相を交代させて選挙戦を有利に進めたい自民党の党利党略により、憲法を軽視するような異例の事態となる。(川田篤志、大野暢子) 臨時国会で新首相が選出されると直ちに組閣し、新内閣を発足させた後、副大臣・政務官人事などを行う。投開票日を慣例通り日曜として、議員任期内に衆院選を行うには、最も遅くて10月5日公示、17日投開票にしなければならず、総裁選日程に合わせて4日に臨時国会を開いていては事実上、間に合わない。 衆院選の任期越えは過去に例はなく「憲政の常道に反する」という懸念も憲法学者に根強い。早稲田大の水島朝穂教授は「任
4コマ漫画「かわうそセブン」は毎週土曜日、東京新聞で好評連載中! WEB版は、毎月第2・第4金曜日に更新します。 次回更新日は10月13日(金)となります。 ※10月度は10月13日(金)、10月27日(金)となります。 ~かわうそ君たちは今の時代にどう生きる?~ 「不条理ギャグ漫画」の草分けとして一世を風靡し、社会現象になった、あの伝説の漫画『伝う染つるんです。』が4月、東京新聞を舞台として、27年ぶりに4コマ漫画の連載で復活します。題名は、本紙キャラクターでもある「かわうそ君」を前面に押し出した新装『かわうそセブン』。毎週2回、土・日曜日の掲載です。連載開始にあたり、作者の吉田戦車さん(57)に復活への決意や新題名に込めた思いを伺いました。 (聞き手・東京新聞) ――「かわうそ君」は昨年2020年から東京新聞の広告キャラクターになっていただき、「空気は、読まない。」のキャッチコピーも定
岸田首相は17日朝、衆院予算委を前に、官邸に関係閣僚を集めて世界平和統一家庭連合(旧統一教会)について協議した。永岡桂子文部科学相に、宗教法人法に基づく質問権の行使について検討するよう指示。永岡氏は「すぐに始めたい」と語った。 続く予算委で岸田氏は、旧統一教会について「2016年、17年に法人自体の組織的な不法行為を認めた民事裁判例が見られる」などと指摘し、「宗教法人法にもとづき質問権行使に向けた手続きを進める必要があり、文科相に速やかに着手させる」と述べた。「旧統一教会と関係を持たない私が責任をもって問題解決していきたい」と、「私が」の部分を強調し、前向きに取り組む姿勢も示した。 このタイミングで質問権行使の検討を打ち出した背景について、与党関係者は「予算委での野党の追及に備える必要があった。前例のないことで、首相は相当踏み込んだ」と解説する。同日には、河野太郎消費者担当相が設置した消費
「旧統一教会のような団体では、寄付を持ち掛けてくる側に信者は内面を支配されている。恒常的に正常な判断ができない状態になっており、寄付の勧誘を行う際の『配慮義務』だけでは救済できない」 新法を巡る与野党協議で最大の焦点になったのが、マインドコントロール(洗脳)状態の下で行った寄付をまとめて取り消せる規定の是非だ。立憲民主党と日本維新の会は導入を主張したが、与党側は「定義が難しい」などと否定的な姿勢に終始。政府案は最終的に、寄付を勧める宗教団体などに対し、自由な意思を抑圧して適切な判断が困難な状況に陥らせないことなどを「配慮」する義務を明記するにとどまった。禁止行為ではないため、違反があっても新法に基づく返金を求めることはできず、罰則の適用もない。 与党側は、宗教団体などが必要な配慮をせずに寄付を要求した場合、事後に民事訴訟で不法行為と認定されるリスクを抱えることになるとして「悪質な勧誘の抑止
東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長の女性蔑視発言を巡り、自民党の二階俊博幹事長は8日の記者会見で、大会ボランティアに辞退を申し出る動きが出ていることについて「そんなことですぐ辞めると瞬間には言っても、協力して立派に(大会を)仕上げましょうとなるのではないか」と述べた。党はその後、「『そんなこと』は『そのようなこと』に訂正する」と文書で記者側に通知した。 二階氏は「どうしてもお辞めになりたいということだったら、また新たなボランティアを募集、追加せざるを得ない」とも話した。森氏の辞任を求める声が強まっていることに関しては「周囲の期待に応えてしっかりやっていただきたい」と語り、辞任の必要はないとの考えを示した。(山口哲人)
住民らの声で伐採計画が見直されることになった「玉川上水旧水路緑道」の樹木=4月25日、東京都渋谷区で(松崎浩一撮影) 東京都渋谷区は、地下水路となった玉川上水の上の緑道(笹塚-代々木、2.6キロ)の再整備で、当初伐採を予定していた樹木158本の状態を再調査し、8割以上の134本を残すと決めた。方針転換には「木を残して」という住民たちの働きかけがあった。4月24日に開かれた周辺住民への説明会で、長谷部健区長は「ロープを張ったり、添え木をしたりして残せる物は残す。地域にさらに愛される緑道を目指したい」と説明した。(中村真暁) 玉川上水旧水路緑道の再整備事業 緑道は1982~85年度に整備された。傷みや老朽化が進み、東京都渋谷区が農園や遊び場、広場などを再整備する。2024年7月以降、笹塚、大山、幡ケ谷の各緑道で着工予定で、総事業費は約100億円を見込む。 緑道は、渋谷区内の笹塚、大山、幡ケ谷、
ロシアによる侵攻が続くウクライナに関心を持ってもらおうと、写真家の宮本直孝さん(60)=東京都港区=が4~10日、東京メトロ表参道駅(同区)のコンコースで、日本で暮らすウクライナ人23人のポートレート写真を展示する。「STOP PUTIN(プーチン)」と書かれたプラカードが写るものなど7枚を東京メトロ側に展示不可とされたが、宮本さんは「被写体の表情で伝わることがある」として、写真を修整し、開催を決めた。(加藤益丈) 宮本さんはこれまで、シリアやアフガニスタンなどから来日した難民やパラリンピック選手らの撮影を手掛けてきた。今回は「デモっぽくしたい」と「NO WAR」「STOP RUSSIA’s WAR」などと書いた自作のプラカードを持ってもらい、3月下旬に撮影。ほぼ等身大の写真23枚を表参道駅の青山学院方面改札近くの通路で壁約30メートルにわたり、並べることにした。 撮影に応じたウクライナ南
「報道は年末、親族の来訪時のもので、私も私的な居住スペースに一時顔を出しあいさつした。一方、公的スペースで報道のような行為があったことを認識したため、本人に厳しく注意した」 26日の参院予算委員会で釈明した岸田首相。前日に記者団に「更迭しないのか」と問われ、「緊張感をもって対応してもらいたい」と続投させる意向を示していたが、あくまで「注意」で済ませる気のようだ。立憲民主党の泉健太代表は同日の会見で「息子に甘過ぎだ。公正、厳正に対処するのが普通だ」と批判。公明党の石井啓一幹事長も「適切とは言えない。大変遺憾」と苦言を呈した。 週刊文春は、翔太郎氏が昨年12月30日、首相公邸に10人以上の親戚と忘年会を開いた際に撮影された写真を複数掲載。内閣改造時に新閣僚の写真撮影で使った階段で翔太郎氏を最前列に、同じように整列して撮影したものや、親戚とみられる男女が、外国賓客の接遇で使うホールで記者会見のポ
菅義偉首相は29日の衆参両院の本会議で、日本学術会議の新会員の任命拒否に関し、会員構成が一部の大学に偏っているなどと繰り返し、改革する必要性を主張した。実際には最も多い東大の会員の割合は減少傾向で全体の2割に満たない。首相は地方の会員が少ないとも指摘しているが、最近は年々増加して関東以外の会員が過半数を占めている。(中根政人) 代表質問では、首相は任命拒否に関して「民間出身者や若手が少なく、大学にも偏りがみられることも踏まえ、多様性が大事であることを念頭に、私が任命権者として判断を行った」と説明した。26日のNHK番組では、会員構成を巡って「地方の会員も選任される多様性が大事だ」とも述べている。 学術会議の大西隆元会長が野党に提出した資料によると、現会員204人のうち、東大の会員数は16.7%の34人で、2011年10月の28.1%から低下。地域別の会員の割合も、関東地方は11年10月に5
「国が殿さま、自治体は家来」に戻っちゃう 玉城デニー知事・保坂展人区長・岸本聡子区長…LIN-Net詳報 地域主権主義に根差した政治を目指す「ローカル・イニシアティブ・ネットワーク」(LIN-Net)は4月20日に東京都内で、7回目の集会を開いた。沖縄県の玉城(たまき)デニー知事が、国が県の事務を代行して進める辺野古(へのこ)新基地建設の問題点を特別報告した。 続くシンポジウムでは、地方自治体への国の指示権を拡大する地方自治法改正案の問題点を中心に、いずれもLIN-Netの世話人で世田谷区の保坂展人区長、杉並区の岸本聡子区長、政治分野のジェンダー平等を目指す団体の能條(のうじょう)桃子代表、政治学者で東京工業大の中島岳志教授が、玉城氏を交えて話し合った。(関口克己、山口哲人)
安倍晋三元首相の国葬が27日、東京・北の丸公園の日本武道館で営まれる。岸田文雄首相の判断で実施を閣議決定してから2カ月余りが経過する中、賛否をめぐる論争は拡大。各報道機関が実施した9月の世論調査では、7月末や8月の前回と比べていずれも反対の割合が増えている。 本紙が調べた大手5紙と2通信社、NHKなど計8つの媒体でみると、全ての媒体で反対が半数を超えた。最も反対の割合が増えたのは日経新聞とテレビ東京の合同調査(9月16〜18日)で、7月末の47%から13ポイント増の60%だった。 首相は今月8日、衆参両院の議院運営委員会の閉会中審査に自ら出席した。世論の批判を踏まえ、国葬を実施する理由を説明するのが目的だったが、従来の説明を繰り返しただけで「多くの国民はなぜ国葬なのか疑問を抱いているが、納得のいく答えは得られなかった」(立憲民主党の泉健太代表)と批判された。
東京都知事選(6月20日告示、7月7日投開票)を巡り、現職の小池百合子知事に出馬要請した区市町村長の有志52人の1人、日野市の大坪冬彦市長が30日の記者会見で、「小池知事側から『支援してくれますか』という打診があった」「(小池氏側からの)応援依頼だったのが、なぜか(首長側からの)出馬要請になってしまった。心外だ」と述べたことを受け、小池知事は31日の定例会見で「私からの依頼はしておりません」と話した。 会見で「知事サイドから支援を依頼したのか」と問われると、小池知事は「知事サイドの意味がよくわかりませんけど、はっきり申し上げると、私からの依頼はしておりません」と説明。「23区の長の方々、多摩島しょの方々とはいつも、ご意見を伺いながらしっかり連携して都政を進めてきた。そうした中で、有志の皆さま方から立候補の要請をいただいたものだと私は理解しております」と述べた。 出馬要請は、東京23区長でつ
2018年11月14日、安倍晋三首相(当時)とプーチン大統領がシンガポールで首脳会談を行い1956年の日ソ共同宣言を基礎に交渉を進めることで一致したいわゆる「シンガポール合意」から、まる3年が経過した。安倍氏は「平和条約交渉を仕上げていく決意であります」と強い決意を表明したが、その後も領土交渉は一切行われず、今では取り上げるメディアもない。 日本政府はかたくなに認めないが、客観的に見れば、日本側から交渉の基礎を1993年の「東京宣言」から56年の「日ソ共同宣言」に事実上逆戻りさせる提案を行った事実は、否定的な意味で北方領土交渉の歴史上、深刻な意味をもつ。プーチン氏らは、約20年間かけて執拗に進めてきた東京宣言の死文化を目指す対日戦略がようやく実を結んだとして、自らの強硬路線の正しさに自信を深めたに違いない。 安倍政権は、希望的観測に基づき、歯舞、色丹の2島返還を一気に実現しようと狙ったが、
ロシアのプーチン政権による侵略開始から3年目に入ったウクライナ。民族と国家の存亡をかけて、果敢に抵抗を続けるウクライナの社会に最も精通した日本人といえば、首都キーウでウクライナの国営通信「ウクルインフォルム」日本版編集者の平野高志氏(42)を置いて他にいないだろう。平野氏は3日、ウクライナの市民社会をテーマにした論文で「ウクライナ研究会」(岡部芳彦会長)の研究奨励賞を受賞したばかり。ウクライナのメディアや社会、対ロ関係、日本の支援への反応などについて縦横無尽に語ってもらった。(編集委員・常盤伸) 平野高志 1981年生まれ。東京外国語大学ロシア・東欧課程卒。リビウ国立大学修士課程(国際関係学)修了。在ウクライナ日本大使館専門調査員を経て、2018年以降、ウクルインフォルム通信日本語版編集者を務める。キーウ在住。著書は「ウクライナ・ファンブック」。写真家としても活動中。
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