静岡県熱海市の土石流災害から三日で一年。多くの人が住む地域の上流に業者が造成した違法な盛り土が甚大な被害を招いたとされるが、結果的に、それを許した行政の対応も、ずさんのそしりを免れ得ない。この「人災」から学ぶべきことは少なくない。 防げたはずだ。今も立ち入りが禁じられた伊豆山の被災地を眼前にすると、そう思わずにいられない。一年前の七月三日午前十時半ごろ。長い大雨の後、標高四百メートルほどの山あいにあった盛り土が崩れ、海まで約二キロを流れ下った。住宅地をのみ込んだ土砂の量は五万五千立方メートル。災害関連死一人を含む二十七人が亡くなり、なお一人は行方不明だ。約百三十世帯が仮住まいを強いられている。 なぜ、こんな危険な盛り土ができてしまったのか。五月に県の第三者委員会が公表した報告書は、次々と残土を持ち込み、法令違反を繰り返した悪質な業者に対し、「断固たる措置をとらなかった行政姿勢の失敗」と断罪