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いまだ光明が見えないウクライナ情勢。この問題に対し、“ロシアの論理” からアプローチしているのが作家の佐藤優さんと副島隆彦さんだ。日本ではあまり報道されないロシア人の考え方とは――。全4回中の1回目。 ※本稿は佐藤優、副島隆彦著『欧米の謀略を打ち破り よみがえるロシア帝国』(ビジネス社)より抜粋、編集しました。 第2回:佐藤優「ロシアが勝っているのは明白だ! 」副島隆彦「プーチンは西側の”ゼレンスキー支援疲れ”を狙っている」 第3回:佐藤優「ロシアTV『悲しむウクライナ人は合成』…なぜ西側は報道しないのか」副島隆彦「私はプーチン頑張れ派」 第4回:佐藤優「情報分析からロシアが勝つと確信している」副島隆彦「プーチンがどんなに優秀で正しいか」 プーチンの目的はネオナチの一掃 佐藤:そもそも、なぜロシアがウクライナに侵攻したのか。その理由は簡単で、NATOの東方拡大への反対と、ウクライナ国内のロ
プーチンは精神を病んだのか 2月24日、ロシアのプーチン大統領はウクライナへの軍事侵攻に踏み切りました。 すべての国連加盟国は武力による威嚇や武力行使に訴えてはいけないという、戦後長らく守られてきた国連憲章第2条4項の約束事を露骨に破り、既存の国際秩序を破壊したわけですから、ロシアの責任は法的にも道義的にも大きい。ロシアの行っていることは厳しく指弾されなくてはいけません。 しかし、情勢を正確に分析するためには、ロシア側の理屈、つまりはプーチン大統領の頭の中を冷静に理解する必要があります。 米議員の中にはプーチン大統領の精神状態を危惧する声もあります。ホワイトハウスのサキ報道官は2月27日、テレビのインタビューで「(プーチン氏は)コロナ禍で明らかに孤立している」と指摘しましたが、私の見る限り、プーチン大統領はいたって冷静で孤立もしていません。
ウクライナにおける戦闘は終局面に近づいてきた ロシアによるウクライナへの軍事侵攻は激しさを増し、民間人にも多くの犠牲者を出しています。 しかしウクライナにおける戦闘は、終局面に近づいてきていると思います。 3月3日に行われたロシアとウクライナによる2回目の停戦協議で、攻撃にさらされる都市から民間人を脱出させるための退避ルート「人道回廊」を設置し、その間は一時的に周辺での戦闘を停止することで合意したからです。 人道回廊を作って民間人を逃がすということは、あとに残るのは軍人だけになりますから、最後まで戦い続けるというウクライナ側の意思表示であり、ロシア側もそれに応じるということです。つまり、戦闘が終局面に入ったことを示しているわけです。 もっとも実際には、3月7日現在、人道回廊は作られていません。実施される予定だった東部の都市マリウポリとボルノバハでは戦闘がやまず、延期になりました。ロシアもウ
ですから一生分ニュースに出たなと思って、それでテレビは(もういい)と。ただ本当のことを言いますと、作家になる時にですね、テレビの世界で、民放でならした竹村健一さん[2]からアドバイスをもらったんです。 「佐藤さん、テレビに出ないほうがいい。実は私は、テレビと書籍の両方をやろうと思ったんだけど、結局できなかった。テレビという媒体は非常に重要な資質があって、毎回ゼロからスタートする。前回に何を話したか、何を放送したかということにとらわれずに、毎回ゼロから視聴者に向かっていく。これはやはり特別の才能(が必要)で、これは、積み重ねで書いていく作家の仕事とぶつかっちゃうんだ」と。 それからあと、「作家になりたての頃はテレビからいろいろな声が来るんだけども、テレビの消費に耐えられる人というのは、自分が見ている中でも100人に1人、いや、1000人に1人かもしれない」と。 「だから作家としてきちんと立っ
開き直りが「なんとなく許される」 『民主主義は終わるのか』から現下日本の政治状況に政治学者の山口二郎氏(法政大学法学部)が強い危機感を持っていることが伝わってくる。 〈二〇一二年末に発足した第二次安倍晋三政権は、国政選挙で勝利を続け、高い支持率を保ちながら、安定しているように見える。しかし、そのもとでは、毎年のように、従来であれば内閣が崩壊するような大きなスキャンダルが起こっている。 森友学園疑惑に関連した公文書改竄など、その典型である。また、集団的自衛権の行使容認については、国論を二分した論争が起き、内閣法制局長官や最高裁長官を経験した専門家が、集団的自衛権の容認は憲法違反と発言した。 従来の常識であれば、内閣が強引に立法を推し進めることはできないような世論状況が存在した。しかし、安倍首相は反対論を無視して政策を強引に進め、腐敗・不正の疑惑に対しては真相究明を拒んだまま職にとどまって再発
NHKが、元外交官で作家の佐藤優氏のインタビューを報道番組『クローズアップ現代』やウェブニュースで大きく取り上げたことが、物議を醸しています(関連情報1 /関連情報2 )。極めて「ロシア寄り」とも受け取れる佐藤氏の主張を、そのまま取り上げてよいものなのか。公共放送であるNHKがプーチン大統領のウクライナ侵攻におけるプロパガンダを助長しているのではないか。ウクライナを取材した筆者の経験や識者達の懸念の声から、この問題を考察します。 【志葉からのお知らせとお願い】ウクライナやパレスチナなどの紛争地での現地取材や地球温暖化対策、脱原発、入管問題などで鋭い記事を配信し続けるジャーナリスト志葉玲が、ジャーナリズムの復権と、より良き世界のための発信をテーマにニュースレターを開始。本記事含め、当面、無料記事を多めに出していきます。お知らせのための登録だけなら無料ですので、是非、以下ボタンからご登録くださ
ロシアのウクライナ侵攻にはどんな目的があるのか。元外交官で作家の佐藤優さんは「プーチン大統領の目的は傀儡政権の樹立ではない。完全な傀儡政権はウクライナの国民に支持されないことを、プーチン大統領は歴史から学んでいる」という――。 プーチンの目的は3つある ロシアによるウクライナへの攻撃は、国連憲章に違反し、国際秩序を力づくで変更しようとする試みで、断じて認めることはできません。ロシアの責任は法的にも道義的にも大きく、厳しく指弾されなくてはいけません。 ただし、ロシアの進軍が止まらない以上、これから何が起きるのか、ひいては今回の軍事行動がどのような内在的論理に基づいているのか、正しく理解する必要があります。 大半のメディアや識者が、「プーチン大統領の目的は、ウクライナに傀儡政権を樹立することだ」と言っています。しかし私の見立ては異なります。 まず、ロシアがウクライナへ侵攻した目的は、3つありま
まさかの軍事行動に、世界は憤りと失望を禁じ得なかった。「狡猾」「冷酷」「暴虐」……そんなキーワードで語られる大国の首領は、一体いかなる思考回路を持ち合わせているのか。本誌(「週刊新潮」)「頂上対決」でもおなじみ、元外務省主任分析官で作家の佐藤優氏が読み解く。 【写真9枚】事実婚状態とされる元五輪金メダリスト「アリーナ・カバエワ」 *** 侵攻の2日前、2月22日の映像では、ロシア軍の戦車と兵員輸送車に「Z」という識別符号が記されていました。ロシアとウクライナは同じ車両を使っており、何らかの形で区別する必要がある。これを見て私は、ロシアはウクライナに入る肚(はら)だと確信したのです。 プーチンの狙いはウクライナの政権転覆、つまりゼレンスキー大統領の首をすげ替えることです。彼自身が明らかにしている通り、今回はウクライナ国内のロシア系住民の保護、そして同国の非軍事化が目的。そのためにまず、現政権
いわゆる「日本学術会議問題」が紛糾している。だが、そもそも何が問題になっているのだろうか。 〈「政府の一連の対応は、学問の自由に対する介入だ」という批判がなされていますが、もともと菅政権にそこまでの意図はなかったと私は見ています。しかし、この諍いが続くことで、結果的に「学問の自由に対する介入」が本当に起きてしまうかもしれない〉 こう危惧するのは、元外務省主任分析官で作家の佐藤優氏だ。 官邸中枢にとっては“もらい事故”だった? 佐藤氏の見るところでは、今回の問題は、「高度な政治意思」(=意図的)というより、さまざまな「偶然」が複雑に絡み合って生じている。 この問題を解きほぐすために、まず官邸中枢での「決裁」の日常業務について、佐藤氏はこう指摘する。 〈小渕内閣時代に、鈴木宗男官房副長官の横で、首相に上げる膨大な決裁書を決裁する場に何度も立ち会ったことがあります。秘書官などが「(人事について)
佐藤優氏 月刊「文藝春秋」は、日本の政治エリートに無視できない影響を与えるメディアだ。今年は同誌の創刊100周年に当たるので、興味深い特集を行っている。現在発売されている2月号では「目覚めよ! 日本101の提言」という現下日本の論壇で活躍する101人の有識者による提言が掲載されている。その中で、南西諸島、すなわち沖縄の沖合に中国が核爆弾を落とす可能性について論じたものがあるので、この危険な言説について読者と情報を共有したい。 <ウクライナやポーランドがロシア相手にあそこまでやれるのは、政府の安保戦略を大多数の国民が支持し、「ロシアには屈しない」という覚悟を共有しているからに他ならない。/日本の場合、例えば台湾有事となった際に中国が南西諸島の沖合に核爆弾を一発落として、「アメリカに協力するな」と脅しつけてくることもあるかもしれない。そうなったときに「確かにリスクは伴うが、民主主義国家としてこ
人間とAIは協業しない イスラエルの歴史学者で文明論者のユヴァル・ノア・ハラリ(1976年生まれ)は、現下の世界に強い影響を与えている知識人だ。 著作は世界各国語に翻訳され、累計は2000万部を超える。ハラリは『サピエンス全史』で人類の過去を考察し、『ホモ・デウス』で未来を予測した。そして本書『21 Lessons』で現状分析を行う。 ハラリは、巨大コンピューターによりビッグデータをアルゴリズム(合理的な計算手順)で処理する時代が到来しつつあると考える。その結果、雇用環境が劇的に変化すると考える。 〈一九二〇年に農業の機械化で解雇された農場労働者は、トラクター製造工場で新しい仕事を見つけられた。 一九八〇年に失業した工場労働者は、スーパーマーケットでレジ係として働き始めることができた。そのような転職が可能だったのは、農場から工場へ、工場からスーパーマーケットへという移動には、限られた訓練し
パソコン草創期に夫と二人三脚で始めたゲーム会社は、「信長の野望」「三國志」などゲーム史に残る作品を生み出し、それらのシリーズはいまも続いている。この成長を支えたのは機関投資家としての妻の存在だった。浮き沈みの激しいゲーム業界の中で、株の売買によって経営基盤を安定させたのだ。 *** 佐藤 「信長の野望」「三國志」など、コーエーテクモは一連のシミュレーションゲームで一時代を築き上げました。もともとシミュレーションゲームは、実際の軍事ではもちろん、外交でも使われます。だから私にはなじみ深いものなんです。 襟川 確かに外交にも、とても有効でしょうね。 佐藤 ポリミリ(ポリティコ・ミリタリーゲーム)と言って、参加者が各国の政策決定者となり、限られた時間と情報の中で、次々と発生する事態を分析して、国益に適った政策を決めていく戦略ゲームもあります。海外の政府機関や大学ではよく行われています。 襟川 1
2022年6月21日、ウクライナの首都キエフで、ルクセンブルクのグザビエ・ベッテル首相と共同ブリーフィングを行うヴォロディミル・ゼレンスキー大統領(写真提供=ウクライナ)。 すでに大量の武器と弾薬がウクライナに送られている 6月16日、エマニュエル・マクロン仏大統領とオーラフ・ショルツ独首相、マリオ・ドラギ伊首相がキエフを訪問しました。3人はウクライナがEU加盟候補国となるのを支持するとともに、そのためにはロシアとの和平協議が不可欠であると述べました。 西側諸国のうち、フランス、ドイツ、イタリアが和平協議を呼びかける一方で、武器の支援に力を入れているのがアメリカ、イギリス、ポーランドです。アメリカはロシアがウクライナ東部で戦果をあげるようになってきたことで、「この戦争は外交によってのみ終結する」ものであり「大量の武器と弾薬を迅速に送ったのは、ウクライナが戦場で戦い、交渉の席で可能な限り強い
なぜかスマホが気になる 『デジタル・ミニマリスト』はインターネットとの付き合い方に関して深く考察するとともに実践的指針を示した優れた作品だ。著者のカル・ニューポートは米ジョージタウン大学准教授でコンピューター・サイエンスの専門家だ。 〈生活に受け入れた当初はそれぞれごく小さな役割しか担っていなかった新しいテクノロジーが、全体ではいつの間にかそれを大幅に超える存在になっていたという、より分厚い現実と正面から向き合ったとき初めて不安の理由が鮮明になる。 それらのテクノロジーは、私たちの行動や気分に及ぼす影響力をじわじわと強めてきた。そしていつしか健全な範囲を超えた量の時間がそれに食われ、その分、もっと価値の高いほかの活動が犠牲にされている。(中略) 私が知るかぎり、日常のなかのオンラインで過ごす部分に振り回されている人々の大半は、意志が弱いわけではないし、愚かなわけでもない。順調なキャリアを歩
取材・文/小峯隆生 写真/©Pool/Wagner Group/Planet Pix via ZUMA Press Wire/共同通信イメージズ 武装蜂起したワグネルのプリゴジン氏だが、プーチン大統領にとっての「中立化」が達成されていれば、どうやら殺されることはないようだ ウクライナ戦争勃発から世界の構図は激変し、真新しい『シン世界地図』が日々、作り変えられている。本連載「#佐藤優のシン世界地図探索」ではその世界地図を、作家で元外務省主任分析官、同志社大学客員教授の佐藤優氏が、オシント(OSINT Open Source INTelligence:オープンソースインテリジェンス、公開されている情報)を駆使して探索していく! * * * ――去る6月23日にワグネルのブリゴジン氏が武装蜂起しました。これは、プーチン大統領とプリゴジン氏が密かに組んで、ロシア軍の中の反プーチン勢力を駆逐するため
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